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国聖学園での日々


 ここはフェリシアン王国の首都、フェリーナ。転生した杏奈は、アンナ・ベルニエとなっており、貴族が16歳になったら入学する国聖学園に通っている。


 前世の記憶と神様とのやり取りを思い出したのは、まさに入学のために首都へ訪れた時だった。時間が空いたので街を歩いていたら、手紙をくわえた黒猫と遭遇したのた。アンナに差し出すように手紙を突き出すので、おそるおそる受け取り開封した。その途端、一気に記憶がよみがえったのだ。


 それから1年がたち、アンナは美しくも聡明……なのは生まれつきだったが、とても真面目で超頑固、そして何よりも男嫌いで有名な17歳へと成長を遂げていた。

 男爵家の長女で、貴族の中では下の方に位置するのだが、美しい容姿、華奢な体格、鈴を転がしたような声に、男達が群がってくる。けれど、ただでさえ前世での記憶のせいで男性不信に陥っており、そこに加えて、しつこく男が絡んでくるので、ますます男嫌いに拍車がかかっていた。

 とは言いつつ、性癖はなかなか治らないのが人間だとだけ、先にお伝えしておこう。




 授業を終えて放課後。人もまばらな校内を歩いている最中、カバンからメモを取り出した。これは今日、いつの間にか机の中に入っていたものだ。


「また校舎裏へ呼び出されたわ。今日はどっちかしら?」


 アンナがため息をつくと、黒猫がすっと現れた。


『今日は男にゃ』


 呼び出しは男の場合と、女の場合がある。男の場合は告白、女の場合は恋人を取ったといちゃもんをつけられるのだ。

 特に女の呼び出しはたちが悪い。下手をすると数人がかりで囲んで責め立てられるのだ。かといって、呼び出しに応じなければ、逃げたと悪口を流されてしまう。


「じゃあ、呼び出しを無視しても大丈夫ね。不純異性交遊だと誤解されたら嫌だわ。帰りましょう、クロ』


 クロ、と呼びかけるのは、神様からお供に付けられた黒猫だ。

 黒猫だからクロ、と安易な名前を付けたら、安直すぎると怒られた。でも、分かりやすくて良いではないかとアンナは思っている。

 クロは、さすが神様がお供に付けただけあって、ただの猫ではない。猫のくせにアンナと会話が出来るのだ。でも、アンナ以外の人間にはニャーニャーと鳴いているようにしか聞こえていないらしい。だから、気を付けないとアンナは一人で喋っている変人に思われてしまう。


『にゃにゃ、ダメにゃ。運命の相手かもしれないにゃ! そもそもすっぽかすなんて人として良くないにゃ』


 クロがしっぽでバシバシとすねを叩いてくる。痛くも痒くもないが、小言を言われてイラッとしてしまう。


「なら言わせてもらうけど、断られたからって、ワンチャン狙って無理矢理キスしようとしてきたりするのは良いわけ? ホント、気持ち悪い」


 思わず口調が乱れる。ちなみにワンチャンなどという言葉はこの世界にはない。つい、前世の言葉が飛び出てしまうのだ。気を付けてはいても、クロと話していると通じるので使ってしまう。


 一週間前も、呼び出されて告白された。イケメンで女子生徒にも人気があった人物だったため、本人的には自信があったらしい。でも、アンナが即断ったので、納得がいかないと迫ってきたのだ。


「私はこの学校で主席を取り、聖女になるための推薦状をもらうのよ。そこで聖女として立派に仕えて、ゆくゆくは大聖女を目指すのよ。純血はもちろんのこと、唇だって守り抜かなくては」


『魔力があれば聖女の仕事は出来るにゃ。建前として言われてるだけで、別に純潔じゃなくたってバレやしないにゃ』


 クロが制服のスカート(膝下が校則で推奨されているが、守っているのはアンナくらいだ)を甘噛みしてぐいぐい引っ張ってくる。


「や、ちょっとめくれちゃうでしょ」


 結局、根負けしたアンナは、呼び出しの場所へと向かうのだった。


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ユスティーナの困り顔がキュートで、サリュ殿下のちょっと意地悪そうな笑みが最高なんです。
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