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【間章】思わぬ展開

【キールside】



 キールは走ってあがった息を整えていた。


「あんなにバッサリ、断られるとは思わなかった……」


 息継ぎの合間に、ぽろりと本音がこぼれる。

 確かに、勢いで言ってしまったのは認める。勉強を教える側と、教えられる側。アンナはあくまで適切な距離を置きたがっていたから、踏み込まれたくないのは分かっていた。

 でも、今日アンナとダンスをして、どうしても言いたくなってしまったのだ。というか、誰にも取られたくなくて、自分だけを見て欲しくて、自分の横にいるのが当然になって欲しかった。


 制服姿で現れたときは、エスコートそのものを拒否されたのかと思った。でも、それは違った。自分が贈ったドレスを着れなくされてしまったから、制服で来たと言った。でも、借りたドレスがあったはずなのに、敢えて制服で来たのは、アンナなりの気遣いなのかなって嬉しくなった。だって、胸元のリボンが、贈ったドレスの布地だったから。そんなの、舞い上がるに決まってる。


 だけど、アンナはやっぱりアンナだった。絶対にキールの思い通りになんか動かない。断られるかもとは思ったけれど、もう少し、恥じらったり動揺したりしてくれるものだと思ってたのだ。

 何故か挑むような面持ちで、きっぱりと自分の夢のために無理だと断られてしまった。しかも、夢の内容が聖女になりたいとか、無理すぎる。だって、聖女という職業は、森から侵入する魔獣を防ぐために、森の近くで生活をしなければならない。つまり、都で過ごすことは無理だ。結婚しても別居生活とか……む、むりぃ。いちゃいちゃしたいに決まってるのに、いちゃいちゃ出来ないなんて我慢できない。絶対に連れ戻して、出て行かないように囲って、誰にも合わせないように監禁する自信がある!って、ヤバいなこの思考、とキールは我に返る。

 でも、アンナの夢を潰すようなことはしたくない。だって、アンナが学年の主席ってことは、それだけ勉強しているって証拠だ。アンナは頭は良いけれど、天才ってわけじゃないから、主席は努力の賜だろう。そんなに頑張っている理由は、きっと聖女になりたいからだ。その夢を、ぶち壊して良いはずがない。


「でも、アンナを諦めたくない」


 キールは夜空を見上げた。月は変わらず照らし続けている。さっき二人でダンスをしていた時のように。

 キールは立場的に、むりやりアンナを妃に迎えることは可能だ。だけど、そんなことはしたくないし、きっとアンナに嫌われる。そんなのはダメだ。だけれど、アンナの気持ちがキールに傾けば、話は別だ。


「俺はアンナの夢に勝つ!」


 ダンスを見守ってくれた月に、キールは宣言した。


 すると、すっと背後で影が動く気配がした。とっさに身構えると、現れたのは、意外な人物だった。ここでは会うはずのない人物に、キールは目を見開く。


「キール殿下、お久しぶりでございます」


「なんで、あなたがここにいるのですか?」


「まぁ、何と言いますが、気まぐれに付き合わされているんですよ」


「まさか……あいつが来てるんですか?」


「そのまさかですよ」


 キールは衝撃の事実に、目の前が真っ暗になった。王宮から離れての学園生活、もちろん王子という身分故に完全に自由とはいかないが、かなり肩の力を抜いて過ごせていた。それに、アンナにも出会えた。そんな楽しい学園生活が乱される予感に、目眩すら覚える。


「あいつは、俺に会いたくないはずでは。なんで、わざわざ来るんですか」


「キール殿下が、楽しそうに学園生活を送っているとどこかから聞いたらしく……」


 影が申し訳なさそうに、苦笑いを浮かべた。


「邪魔をしてやれ、とやってきたわけですか」


 キールは頭を抱えた。だってそうだろう。これで確実にいろいろ邪魔されるのが確定されたのだから。

 何を邪魔されても良い。でも、アンナだけは、あいつから守らなくては。キールは決意するのだった。



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