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前世の記憶


 これはかつての記憶。


 残業後、彼氏のアパートを訪ねた。すると、玄関の扉を開けた向こうには、彼氏だと思っていた男と、知らない派手な女がいる。

 あれ、おかしいな。ここ、彼氏のアパートだよね。

 杏奈は思わず扉の号数を確認する。残念ながら記憶の通りの号数が表示されていた。


「あー……杏奈、わりぃ。言おうと思ってたんだけどタイミングがなくてさ」


 そう言いながら彼氏だと思っていた人が、こちらにやってくる。


「今、あいつと付き合ってるんだ」


 何を言ってるんだ、こいつ。あんなに、好きだよって、私だけだよって言ってたくせに。

 頭の中ではそう怒鳴っているけれど、杏奈の口は一ミリも動かない。


「お前って中途半端にいろいろ注意してくるのがウザくてさ。しかもどうせ真面目キャラなら貫き通してくれたほうがマシなのに、お前の真面目さって気分によってブレるから面倒くせえし」


 嘘でしょ。

 そんなこと思ってたの?

 中途半端に真面目なのが、ウザかったってこと?

 意味わかんない。

 本当はもっとこうしてって言いたかったんだよ。

 でも、あんまり言うと嫌われるかもって我慢してたのに。


「そもそも、あいつが本命だから。ということで、お前とはさよならだ」


 彼氏の言葉が、買い物に行こうとでも言うかのような軽やかさで放たれた。

 ショックのあまり、思わず一歩下がる。


「あとお前の飯、俺の口には合わなかったわ。今後誰かに作ることがあるようなら気を付けろよ。じゃあな」


 すると、杏奈の目の前で、無情にも扉が閉められた。





 呆然と、スーパーで買った食材を持ちながら歩く。あいつ、最低だ。いつも金がないから作ってくれて助かるって言ってたくせに。食費なんて一円すら払わなかったくせに。

 振られた――じわじわと、理解したくもない現実が頭の中で整理されていく。


 浮気をされたのだ。いや、自分が浮気相手だったのだろうか。いや、この際どっちでも関係ない。二股掛けられたあげく、彼は相手を選んだのだ。


「最低、男なんて信じられない!」


 思わず怒りを口にした時だった。

 目の前にまぶしい光と、けたたましいクラクションが響いた。


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