5.明け方、牢獄にて。
今日は、たぶんここまで。
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追記・身内が急病のため、少し遅れます。申し訳ございません。
魔王軍の勢いは凶悪の一言に尽きた。
騎士団長ダンは成すすべなくその身を拘束され、せめてもと逃がせたのはアリシア姫のみ。そんな彼女も、いまどうなっているかは知る由もない。
すでに拘束され、国王陛下と同様に殺害されているだろうか。
それとも、運よく逃げ果せただろうか。
「無様だな、騎士団長」
「くっ……!」
――牢獄の中。
ダンは手足を拘束され、雑に転がされていた。
そして、そんな彼に唾を吐き捨てたのは魔王軍の一味ではなく……。
「貴様、副団長でありながら……!」
紫髪に赤の瞳をした男――副団長のリーシャだった。
長身痩躯の彼は、あからさまに見下した視線をダンに送っている。
「副団長、などという席に甘んじる私ではないのでね。もし恨むなら、この私を正当に評価しなかった国を恨むんだな」
そして、そう吐き捨てた。
まるで自分は、人間側ではないと言わんばかりに。
それもそのはず。
何故なら、魔王軍を引き入れたのは他でもない彼だったからだ。
リーシャは騎士団副団長でありながら、魔王軍と取引し、その軍勢を王城内部に引き入れたのである。結果としてその目論見は果たされ、王城の守りは瓦解した。
副団長であって、裏切り者の男はほくそ笑む。
そして、ダンに向かって言った。
「それにしても、運がなかったな。今日までに勇者を見つけられていれば、私も打つ手がなかったところだ。あるいは、神が私に味方した、ということかもな!」
「馬鹿を言うな! 女神アンゼロッテ様が、貴様のような者に助力するわけがないだろう!?」
「あっはっはっは! そうムキになるな。老いた血管が、切れるぞ?」
それにダンは怒りをあらわにする。
しかし、リーシャは悪びれた様子もなくせせら笑った。そして、
「いやぁ、愉快だ! 私を馬鹿にしていた者たちが、みな壊れていく!」
大仰に手を広げて。
彼は勝利宣言のように、こう口にするのだった。
「これを止められるのは、伝説の勇者をおいて他にいない! すなわち――」
――勝利は我が手にある、と。
そう、リーシャが続けようとした時だった。
「……! 何事だ!?」
「これは……!?」
大きな地響き。
そして、魔王軍の者たちが叫ぶ声が響いたのは。
どうしたのかと困惑するリーシャのもとに、配下となった魔族が現れた。
「どうした、なにがあった……!」
「侵入者です。数は三名!」
「侵入者……だと……!?」
その魔族から告げられた言葉に、彼は表情を歪める。
さらに人数がたった三名と聞いて、そこには怒りが浮かんだ。
「ええい、すぐに排除しろ!」
「はっ!」
リーシャが命じると、魔族は短く答えて姿を消す。
しかし、彼の怒りは収まらなかった。
「どうなっている……!?」
爪を噛み、歯を食いしばる。
そして最後に、こう決断するのだった。
「有象無象の魔族に任せていられるか! こうなれば――」
自身の悲願を邪魔されては、たまったものではない。
だから、
「私が自ら、邪魔者を排除してくれる……!」
リーシャは武器を携えて、牢獄の外へと出た。
「いったい、誰が……?」
そんな中。
残されたダンは、眉をひそめてそう呟いた。
「いや、まさかな……」
浮かんだのは、微かな希望。
しかしそれはあり得ないと首を左右に振って、彼は小さく笑うのだった。
次回更新は、明日の昼になるかと。
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