2.回避能力は物理だけではない。
ここまでがオープニング。
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「生前の記憶から、スキルを付与――だったよな?」
それで【絶対回避】と【完全無敵】……?
どういうことだろうか。どっちも、俺には似つかわしくない能力だった。
だって正直な話をすれば、俺は人生の敗北者だ。取り消せよ、って誰も言ってくれない。むしろ頷いて、その場でお話が終わってしまう。
可能性があるとすれば……。
「やっぱり、あれか?」
俺の頭に浮かんだのは、ゲームのノーダメ縛りだった。
あれは何度も試行回数を重ねて、ようやくゴールへとたどり着くものだ。しかし、結果しか知らない人にとっては【絶対回避】であり【完全無敵】だろう。
で、要するに俺の生前の記憶という話に戻って……。
「マジかよ」
俺は思わず、苦笑い。
これは誤算も誤算、大誤算も良いところだった。
だってそうだろう? こんな俺に、あり得ないチートが降りてきたのだ。しかもゲームの世界に転生したうえで。
「なに、そんなにニヤニヤしてるんだ? レオ」
「な、なんでもねぇよ。ギオ」
ニヤニヤしていたのか、俺。
声をかけてきたのは、先ほど一緒に狩りをしていた幼馴染――ギオ。
捕らえた巨大猪を軽々と運ぶ豪傑は、首を傾げてしまった。
ひとまず、怪しまれないように話を繋ごう。
「そういえば、今日の夜は町長の家に行かないとな」
「そうだな。なんの話なんだか……」
そんなわけで、俺は今朝の話を振った。
その内容はいま言った通り。ちなみに俺は、その内容を知っていた。
そう、ここはすでにゲームの物語の中。
レオとギオが町長に呼び出されるところから、すべては始まるのだ。
「魔王軍も攻勢に出てきてるからな。もしかしたら、選定の剣を抜きに行け、とか言われるんじゃねぇか? ま、それはないか! あっはっはっは!!」
「………………」
ギオが、すべてを話してくれた。
要するにこれは、主人公であるレオが選定の剣に選ばれるイベントだ。
これによって彼は勇者として旅立つことになり、各地でとにかく酷い目に遭いまくる。その未来だけは、なんとか回避しなければならない。
すなわち、どうにかしてフラグを折らなければならない……!
「なぁ、ギオ? 覚えてるか」
「ん? どうした」
そう思った俺は、彼にこう問いかけた。
「俺たち、将来は一緒に冒険者になるって言ってたよな」――と。
とても自然な流れを装って。
だが、これもまた事実。選定の剣のイベントがなければ、レオは一介の冒険者として生涯を終えるはずなのだ。
俺の中には、ある確信に近い考えがあった。
それというのは、俺の中に目覚めたスキル【絶対回避】は――。
「その約束、一緒に果たさないか?」
物理だけではない。
事象にも働くのではないか、ということ……!
「今日、町長に言って許可をもらおうぜ。俺たちはもう成人だ」
「レオ……」
俺がそう言うと、ギオは目を見開いた。
そして、頭の中にこんな声。
【絶対回避】――発動。
よっしゃ、成功した!!
俺は内心で、力強くガッツポーズ!!
俺の予想は当たっていた。
これで、選定のイベントは回避されたはず!
「あぁ! もちろんだ、覚えていてくれたんだな!!」
ギオが、俺の手を取って嬉しそうに笑う。
その笑顔に思わず、こちらは安堵の笑みが漏れた。
彼とは目的が違うが、安全な生涯を送るため。冒険者にでも、何にでもなってやる。俺はこの瞬間、心に誓った。
「それなら、早く町長に会いに行こうぜ!」
「あぁ、そうだな!」
悲劇を回避するためなら、なんでもやってやる――と。
そして、必ず幸福な未来を掴みとってやるんだ。
俺はそう思いながら、ギオの後に続くのだった……。
次回更新は、早ければ明日の午前中に。
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