4話 尾行
今回は短めです
「…これです」
刑事が渡したのは、『Crow殺人事件』と記されているファイルだった。俺は、そのファイルを1ページ1ページくまなく読んだ。Crowの殺害方法、出没場所、狙われた被害者の特徴など詳しく載っていた。
「本当にCrowの新しい情報を見つけたのですか…?」
そう、俺がこのファイルに目を通せているのは『Crowの新たな特徴を見つけた。それがあっているかCrowの情報を見せてください』と頼んだからだ。
「恐らくCrowは捕まる事への恐怖感がありません…。そうでなきゃ、人目が多数ある公園で人殺しなどはしませんよ…」
もし捕まるのが怖いなら、俺と沙希が別れたところを襲えばいいものを、Crowはわざわざ人目が多い公園で殺人を実行した。あの時たまたま人気が少なかったが、いつもなら結構の人があの公園を利用している。まさかその日の公園は人気がない事を知ってたわけではあるまいし…
「…たしかに妙ですね…。もっと人気がないところで殺人を行なっていれば、誰がやったかなんて簡単に特定できませんし…。現にCrowについて未知ですから…」
証拠も何も残さないCrow…一体何者なんだ…?
「……あれ?」
「どうかされましたか?」
「これ…」
一つ気になる文があった。『Crowは被害者の体を滅多刺しにして殺害している』…。これはおかしい…。だって沙希は胸を一突きされて殺された…。殺害方法が違うのだ。
「沙希の時だけ殺害方法が違います…」
「……。Crowは複数犯だったのか、沙希さんの時は、何か特別な理由があったとか…?」
確かにそう考えるのが普通だ。でも複数犯か特別な理由か…。あの時見たCrowは、迷わず沙希を狙い、俺には見向きもしなかった。あの時、殺すのは沙希じゃないとダメだった理由があるんだ…。
(………。考えても分かるわけないよな…)
俺は刑事でも探偵でもない…ただの凡人だ。推理なんて出来ないし、指紋を発見するとか出来るはずがない。だから…俺は実際この目で確かめるんだ…このスマホで…!
「ありがとうございました。また何か思い出したら連絡します」
「分かりました。ではまた!」
俺は、ポケットに入っているスマホを握りしめ覚悟を決める。Crowの事を探るということは、危険が伴うという事だ。それでも…
(また沙希と一緒にいたい…!)
そんな気持ちを抱えながら警察署を後にした。
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しばらく移動してある公園のトイレの裏に来ている。トイレの裏なら誰にも見られずに時間移動出来るからだ。俺は、時間を午後9時にセットすると、周りがぼやけ、カーッと白い光に包まれた。
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『おい、逃げるぞ!』
『う、うん…』
時間移動してすぐに聞こえたのは、誰かの声だ。もちろん俺はその声の正体を知っている。沙希達だ。そう、俺が時間移動した場所は、襲われた公園のトイレの裏だ。ここならすぐに駆けつけられる。それに今回の目的は…
『かっ…!』
『沙希!?』
「………っ!」
やはり何度聞いても心が抉られる…。慣れるはずがない…、慣れてはいけない…。すると、トイレの側をCrowが横切って行った。
「…!!」
俺はCrowの跡をこっそりと追った。Crowは意外にもそれ程早くはなく、隠れて追いかけても見失うことはなかった。俺もそれなりに距離を離して尾行していたから気づかれていない筈だ。
「……?」
筈なのだ…。なのに、向こうはこちらを振り向く動作さえしていないのに、まるで俺を撒こうとしているような動きだった。そして、Crowが道を右に曲がったのを確認し、それを追うように曲がった道をそっと見てみると…
「…!?いない…!?」
Crowが忽然と消えたのだ。次の曲がり道は、数十メートル先で、俺が覗くまでに曲がれる距離ではない。
「どうなっているんだ…?」
Crowがいなくなった道で呆然とする。そもそもCrowは人間なのか…?そんな事を思ってしまうくらい奇妙なことが起きたのだ…。
「…?これは…?」
道の真ん中に何やら紙切れのようなものが落ちている。拾い上げてみると、文字らしきものが書かれていた。
『自分を罰せ。他人を罰せ。それが出来たならきっと皆は救われる』
「どういう意味だ…?」
よく意味が分からない…。だけど、これは恐らくCrowの物で間違いはないだろう。俺は、その文を読んでいると、何故か悪寒がする。不気味というのは分かる。だけど…それとは違う悪寒が…
「…警察署で調べてみるか…」
まだまだ分からない事ばかりだ…。だけど、Crowの行動に何か引っかかる。そんなモヤモヤを抱えながら俺は、現代へ戻った…。
遅くなり申し訳ありません!