最終話 理由
今、目の前には追い続けたCrowが涙を流しながら横たわっている。苦しそうに腹から流れ出てくる血を抑えており、呼吸が浅くなっているのが分かる。
「俺も沙希を助けるために時間移動を繰り返していた……。今のお前みたいにな」
そう話しているCrowの目は、どこか遠くを見ているようで切なげだった。Crowは、ゆっくりとポケットからスマホを取り出した。そのスマホは俺が使っているスマホではなく……
ー時間移動に使うスマホだったー
「俺はその時知らなかったんだ……。このスマホの恐ろしさを……」
「恐ろしさ……?」
Crowはふっと笑い、何やらスマホを操作し始めたと思ったら、スマホの画面をこちらに向けてきた。俺は訝しみながらスマホ画面を見ると……
『ただいまパラレルワールド発生中!!』
「なっ……!?」
パラレルワールド……このスマホの説明で話していた時聞いた言葉だ。その時はあまり気にしていなかったけど、今なら気づいた……いや、気付かされた……。
『パラレルワールド発生!!沙希さんが現在通っている大学でいじめを受け、自殺してしまいます!』
「っ……!?」
自殺……?沙希が……?その事実に俺は目眩がした。もし、この状況から助けられても沙希自身が自殺してしまうからだ。それなら俺は何のために……?
「だから……言っただろ……。沙希はいじめられて……自分で死んでしまうんだ……」
Crowはもはや話すのも辛いようだ。だけど、Crowは話すのをやめない。今までの事実をこの俺に突きつけるために……Crowは話すのをやめなかった。
「沙希は……苦しんで死んだんだ……。だったら……、苦しまないように死なせてやるのが……俺の役目なんだ」
「何が……役目だ……!」
俺は感情に任せ、Crowに飛びついた。俺の中で、怒り、憎しみ、悲しみ……負の感情がドロドロに混ざり合い俺を染めあげていった。Crowはもはや動ける状態ではない。だけど……俺はCrowを許せなかった。
「何が役目だよ……!!沙希を守ってやるのがお前の役目だろ!?」
「それが出来ないんだよ!!」
「っ……!?」
俺にはCrowが何言っているのかわからなかった。沙希を守ることが出来ない……?何で……?どうして……?
俺の気持ちを知ってか、Crowは辛そうな顔で話始めた。
「そもそも“時間移動”は何の代償もなしに使える物ではないんだ……。そして、その代償が……“自分の寿命”だ……。自分の命で時間を操っているんだ……」
「なんだよ……それ……」
衝撃的事実を知ってしまった。確か俺が“時間移動”した回数は……9回だったはずだ……。今俺の寿命は幾つなんだ……?1回でどのくらい寿命を削られる……?
「……1回の時間移動で……8年寿命を持っていかれる……。これはスマホの説明欄に載っていたから間違いない……」
「8年って……」
てことは今俺の寿命は88歳って事か……?あと十何年間しか生きられないって事か……?何だよそれ……。
「俺の寿命は残り少ない……。沙希はいじめならまだ耐えるが、俺まで死んだら何しでかすか分からない……」
「………」
そうだ……。沙希はそういう娘だ。こんな俺でも大切な人だなんて言ってくれた。愛してくれた。優しくしてくれた……。いじめを受けて、俺が死んだら沙希はどうなる?
「だから……一緒に死ねば沙希も苦しまないで済む……だから……だからだからだからだから」
狂っている……。たしかに俺が死んだら沙希は悲しんでくれるだろう。だけど、だから沙希を殺す?本当に目の前にいるのは俺なのか……?
「やっぱりお前は狂っている」
「っ……!?」
もはやこいつは人ではない。化け物だ。俺は自分自身を見てそう確信した。こいつはこの世にいちゃ行いけない。沙希も殺させない。死ぬのは……
……俺だけで十分だ……
「……?」
「どうした沙希?」
私は何故か嫌な予感がした。何か……何か大切なものが遠くへ行ってしまいそうなそんな寂しさを……。助けなければならない……。向こうにいる人を助けなきゃ……
「おい沙希!どこに行くんだ!」
「っ……!?」
私は康太に腕を掴まれている。私……何でそんな事を……?何で……助けなきゃって思ったの……?分からない……。自分自身が分からない。
「何してるんだ!早くここからーー!!」
『おい!!火事だぞ!?」
『何でこんな所で!?』
振り向くと、そこは火の海で覆われていた。先ほどまで暗く静かな公園が赤く染まり、近所の人たちがわらわらと集まって来ている。
『おい!?だれかいるぞ!?」
『二人!?あいつらが火をつけたのか!?』
『あれはもう助からないぞ……』
そこには、横たわり焦げたのか黒くなっている物が見えた。形から人だという事は容易に分かり、その物が二つあるのだ。そしてその炎の外には……2台の同じスマホが転がっていた。
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『昨夜、東京中央区の公園で2名の焼死体が発見されました。全身が焼き焦げており、身元の判明が難しいようです』
私はそのニュースを見て気づいたことがあった。それは……
“私が最愛の彼氏にあげた私特製のネックレスをかけていた”事に……
皆さんはもし超能力を使えるスマホがあったらどうします……?
今までお読みなっていただきありがとうございました!!




