第1話 カッパ上京する
ここは奥津軽の誰も知らない沼・・・
沼のそこにある洞窟の一角・・・
2匹のカッパがいた。
一匹は長老と思わせる風格の持ち主だ。
もう一匹は若く、人間で言えば十代ぐらいだろう。
長老カッパはあぐらをかいていて、若いカッパは真面目な顔して正座をしていた。
真剣な眼差しの長老カッパは口を開いた。
「雄大、わかっているだろうな。」
「はい、長老」
雄大と呼ばれたカッパはうなづいた。
「お前は今年で18だ
津軽の沼ガッパの里の長老として命ずる。
人間社会に入り、人間として生活するのだ。」
「あの・・・長老・・・
つーかじぃちゃんおら人間の姿で町の高校さ通ってるだ」
雄大は呆れた顔になった。
「わしが呆けてると言うのか!?」
「いつも事じゃねぇか」
「お前だって夏休みの川で遊び半分でキャンプ客を襲ったでねぇか!!
三年殺しとほざいて!!
しかも海水浴場では勃起したチンコを水面に出して女の子をジョーズのように追い回したでねぇか!!」
「えっ、何で知ってるの?」
雄大はビックリした顔をした。
「まさかじいちゃん、亀仙人みたく女の子の水着を見たくて覗いていたんじゃ・・・」
「何でわしがそんな事せにゃならんのじゃ。」
じじいカッパの目は完全に泳いでいた。
その目を見た雄大も図星だなと思ったようだ。
「とにかくお前は東京の大学の推薦を受けたんじゃろ、カッパの姿じゃ人間社会には入り込めんじゃろ」
「じいちゃん勘弁してよ!
オレ人間の姿で学校通ったり遊んでたりしてたけど・・・」
「そうか、お前は早いうちに変身術覚えたんだっけ。」
雄大はじじいカッパのボケに頭を痛めていた。
つくづく年なんだと思ったようだ。
「もう、オレ上京する事に決めたから」
「わかった、行って来い。」
こうして話は終わり、雄大は家へ帰り、支度を済ませ、津軽を後に東京へと向かった。
そして、東京では日大に推薦で入り、ボクシング部に所属、大学生全国大会では3位に入った。
見事な成績だった。
そして卒業、大手トレーニングジムチップネスに就職し、そこで彼女も出来た。
何年かするとスタジオレッスンの大半を任された。
順風満帆な人生である。
しかし、カッパと言う点を除けばの話である・・・