始まりの零
誰もいない戦場の跡地、地面についた薄い血の跡と転がっている死体、果てしなく見える海の水平線。
そこに二人の人間が立っていた。一人は青年、一人は少女。
彼女たちは海岸にポツンと座って水平線から登りかけている太陽に似た光り輝く星を見つめていた。
少女はぽつんといった。
「私たちだけだね。生き残ったの。みんな死んじゃった。もう希望なんてない・・・」
男性は何も言わなかったようだった。
そこには血に汚れた地肌丸出しの地と果てしなく広がる海、そしてきれいに輝く登りかけの太陽であった。
「わっ!?」
ズルッと自分の体がが寝床からずり落ちるのを感じた。掛け布団の程よい暖かさと室内の肌寒い気温を感じる。
神始美月は肌寒さを感じて目が覚めた。
気が付くとそこは布団から外れかけて冷たい床にはみ出していた。どうやら寝ぼけていたらしい。窓から白っぽい朝日がさしている。鳥の鳴き声がチュンチュンと聞こえる。ゆっくり起き上がると大きくあくびをしまた布団に戻った。
「またあの夢・・・」
近頃同じ夢を何度も見るようになった。それは自分が赤い夕陽で染まったような空のヘンテコな世界にいて海岸に二人で海を眺める夢である。実に奇妙だ。
ふと彼女は壁にかけている時計を見た。
時計を見るともう8時であった。
「ふむ。今日は学校休みだったっけ」
起き上がると美月は手を体にこすりながらストーブのスイッチを付け、全力疾走で布団にもぐった。
今葉ちょうど12月、真冬なのだ。 さむいさむい。
ここはケイドリア大陸(我々の地図で言うユーラシア大陸)の東にある国、日輝公国である。
私の故郷だ。
第二次大戦が終結後、私の住む日輝国は敗戦し、勝戦国の属国となった。
そして戦後70年となる。
私たち一家はその首都である東宮にくらしている。
台所からは͡コトコトとポットのお湯が煮えている音が聞こえる。母は毎朝いつものごとくそこで豆の醤油スープとご飯やその他おかずを作っているのだ。
「早いわね、美月。いつも寝坊のあなたにしては上出来ね」
「んー・・・ねみゅい。てか母さん、今日は奇跡的に起きたんだって」
私の住んでいる地域は今日も平穏な一日になるはずだった。そう・・・はずだった。




