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ずっとおぼえてる   作者: ことり あきこ
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京都 ~1984年3月 

 どうしてバレエに通わなくなったのか、眞子は自分でもよくわからないまま、休み続けていた。


 母親の入院中、親戚の家に預けられて休まざるをえなくなり、母親の死後はばたばたとあわただしくて、学校も何日か欠席した。


 再び登校し始めても母親がいなくなった生活が元通りになるはずがなく、眞子のことなど頭にない父親や姉に、やりたいことも欲しいものもなにひとつ要求できなくなっていた。


 母親を失うのと同時に、眞子の子供時代はすでに終わっていた。


 母親が死んだあと幸雄と朱美が、初枝の入院と手術にいくらかかったとか、今度の法事の料理はいくらのものにするかとか、更には

「バレエに週3回も」とか

「バレリーナになるわけでもないのに」

 と話しているのを耳にしたことも、バレエをまたやりたいと言い出せない理由の一つかもしれなかった。


 どちらにしろ、もうどうでもよかった。


 母親が死んでからの眞子は、その場その場をただ生き延びるだけで精一杯だった。


 依子から電話があっても、ああ先生か、と思っただけだった。

「また教室においで」と言われても、母親が死んでからたくさんの人にかけられた「また遊びにおいで」とか「かわいそうに」とか「大変やったね」と同じように、受話器から聞こえる言葉は何一つ大した意味をなさなかった。


 再びバレエを踊りたいと気づくまでに、一年以上かかった。 

 

 一年以上ブランクのある眞子に、依子は容赦ようしゃなく厳しかった。


「今の説明きいてた?」

「もう一回!」

「できないんやったら一人で邪魔にならへん所で練習してなさい」

「ひじ下げない…肩は下げる」

「だから背中引き上げてっ」

「おしりしまう!!」

「さっきなんて言われた?聞いてた!?」


 厳しい言葉の一つひとつに、徐々に体が反応していく。

 できるとほめられる。

 体は疲れるのにエネルギーがみなぎってくる。


 やがて眞子は、持ち合わせている生命力のすべてをバレエについやすようになった。


 学校では五年生に進級するときにまたクラス替えがあり、学校生活を共にすごす女子たちはすんなりと見つかったが、眞子は誰にも親密な感情を抱けないまま、卒業までの退屈な2年間を過ごした。



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