もうだめかもしんない
あぁ、空が青いな~
おぉ、もうこんな時間か
今日の昼飯はなんだろうな~
「じゃじゃーん、コンビニお手製からあげ弁当!うまそうですね~」
朝、寝坊して、弁当を作れなかった母から、昼飯代として千円渡してもらった。うちの学校には学食があるのだが、人混みが嫌いな俺は、朝、コンビニに寄って買っておいた。
冷えてるけどうまいのな~。
「あのさ、現実逃避してるとこ悪いんだけど」
そう言いながら、イケメンが空いてる俺の前の席に座る
「やめろ、みなまでいうな」
「勘違いが順調に広がってるみたいだな」
うん、知ってる。
なんか休憩をはさむたびにほかのクラスの人が見に来るし、今も、開け放たれた廊下の窓越しから、たくさんの人がこっち見てるし、中には指さして笑う奴いるし。
まったく、人を指さすなと教わらなかったのかい?
ふぅ、弁当を朝のうちに買っておいて良かった。この状態じゃトイレにも行きづらい・・・
どうしたもんかと頭を抱えていると、ドアが乱暴にあけられる。
「渉!」
入ってくるなり俺の名を呼び、返事はないが、俺がいるのを確認すると、こっちに近づいてくる。
俺は相手の顔を見ずに、応対する。
「今月はいっぱいいっぱいなんだ、他をあたってくれ」
「何の話してるのよ!?」
「ご利用は計画的に?」
「別にお金を貸してほしいわけじゃないわ!」
入ってきたのは、小学校からの友達?である、桃丘沙織だった。
「だったら、何の・・・あぁこの前貸したご飯代返してくれるの?」
「違う!!しかもあれは、あんたの奢りでしょ!」
えー、この前の休日にご飯を食べに行くと、問答無用で連れていかれた挙句、財布持ってないから払っといてと言われ、しぶしぶ払った記憶があるんだけど?
食い逃げで捕まりたくない。
「あ、あれは私の優勝祝いだったのよ!」
彼女は小学生のころから空手を習っている。
闘争本能が強く、負けず嫌いであった彼女は、もともとの才能と、たゆまぬ努力の結果、全国でもトップクラスの実力となり、先日、全国大会3連覇の偉業を成し遂げたらしいのである。
「それはおめでとう、今初めて聞いたんだけどその情報」
「ちゃんと言ったわよ!、・・・たぶん」
たぶんて言っちゃたよ、この人。
それを、にやにやしながら聞いていたイケメンが、会話に入ってくる。
「青春してるね~、デートなんてうらやっ!?」
「でででデートなんてしてない!」
鋭い突きがみぞおちにクリティカルヒットしている。さすが全国1位、見事である。
哀れイケメン、お前の骨は拾ってやらん。バカなことを言った罰だ。
顔を真っ赤にさせて怒っているので、とりあえず話を元に戻す。
「で、なんのようなんだ?」
そう問いただすと、こっちに振り向く。顔はまだ赤いままだ。
激おこなんですね、わかります。
先ほどのやり取りの後なので言い出しづらいのか、口を閉ざしたままだ。
待つこと数十秒、意を決したのか、こちらをきっとにらみ。
「あんた、告白したんだってね!?」
まだ顔が赤い彼女は、大声でそういったのだった。