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花宝石の箱庭  作者: 琴花翠音
第一章 神の力を求めて
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双方の思い

 学校から戻ったエレンたちは、急いで司令官室へ向かった。重々しい雰囲気の扉が見えてきたところで、ちょうどリッチがその部屋から出てきたところに遭遇した。


「リッチさん!」

「あぁ、皆様おかえりなさいませ。丁度セラヴィ様に、大方のことを報告し終えたところです。後の詳細や今後の対策については、皆様とお話がしたいとのことですので」

「ありがとうございます」

「どうぞ、最高司令官がお待ちです」


 そう言って、リッチが扉を開き、全員に中へ入るよう促す。エレンを先頭に、司令官室へ入っていく。部屋に入ると、奥で一人の女性が待っていた。透き通るような水色にも似た銀髪に、ローズピンクの瞳を持つ、落ち着いた雰囲気の女性。

 彼女こそ、このガーデンを率いるリーダー、最高司令官のセラヴィだ。セラヴィは、学校から帰ってきたメンバーを見ると、安心した表情で迎えた。


「…待ってたわみんな、おかえり。リッチから大体の話は聞いたけど、大変だったわね…セーラとファニーまで…」

「はい…まさか学校まで襲撃されるとは、思ってもいませんでした」

「学校全体じゃなく、『Sクラスだけ』だったのが救いでした」

「本当よねぇ…これが全校規模だったら、いくらガーデンに所属している学生がいると言っても、とても手に負えなかった」

「クラスどころか、狙いはエレン姉ピンポイントやで!絶っっ対許せへんわ!」

「うーん…でも結局あたしたちも襲われてるから、最終的にはクラスだよね…?」

「ん?……あ、そか!」

「あはは…」

「それと助かったのは、あと数日で長期(夏休み)に入るってことね」

「そうだ!もうすぐ長期じゃん!」

「…ターボ、なんでそれが救いになるかわかってる?」

「え?学校休みじゃ…ぐふぅっ!!」

「確かに休みだけれど、そうすれば、この施設でみんなを保護できるからよ。特にエレンは」

「……はい…」

「つか、なんでエレンがこんなに狙われるんだ? 前も任務先で拉致られそうになったこと、あったよな?」

「あんた本っ当にわかってないわね!エレンが美人だからに決まってるでしょう!?」

「シェリー…そんな堂々と恥ずかしいこと言わないで……」

「…本当の理由は──…だからなんだけどね…」

「「「え?」」」

「あぁ…なんでもないわ。それより、みんな疲れてるでしょう?ゆっくり休みなさい」


 そう微笑んで、セラヴィは報告書を預かり、エレンたちが部屋を出ていくところを見送った。しかし、セーラだけは残して。


「…セーラ、あなたはエレンの秘密を知っているのね? 出来る限り教えてほしいのだけれど…いいかしら?」

「全部は…話せないです……でも、お姉ちゃんが『写し子』なのは、ちゃんと理解しています。今日襲われたことは、本当にびっくりしたけど…」

「えぇ、そうね……セーラ、あなたも怖かったでしょう…?」

「私は大丈夫です!…私より…一番不安になってるのは、きっとお姉ちゃんですから…」

「…そうね……ありがとう。また話せるようになったら聞かせてね。今日はあなたもゆっくり休みなさい」

「はい、失礼します」


 セーラも部屋からいなくなった後、司令官室に繋がっている隣の部屋から、一人の男が入ってきた。ベージュに近い灰色のさっぱりした短髪で、真面目そうな青年。彼はガーデンの副司令官で、セラヴィのサポートを務めているセイロン。

 誰かと通信していたのか、ちょうど花盤をしまっているところだった。


「あら、お疲れさま、セイロン」

「もうすぐで帰ってくるよ。あいつら」

「そう……何か掴めたかしら…?」

「あんまり…ってところだな。これといった報告が無いから」

「やっぱり、難しいところ…ね。エレンのこともあるから、できれば最悪の事態にならないといいわね…」

「そうだな…エレンについては、恐らく"あいつ"がよくわかってるだろうし、一番心配しているから、少しは任せた方がいいかもな。俺とセラヴィの二人じゃあ、今の件だけでも手がいっぱいだろう」

「…そうね……」


 セラヴィは不安そうにうなずくと、パノラマのように大きく開けた窓の外を眺めた。下を見ると、施設に向かって歩いてくる数人の影。その先頭を歩いている黒髪の青年を、心配そうに見つめた。

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