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花宝石の箱庭  作者: 琴花翠音
第一章 神の力を求めて
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攫われた少女とミュレー

 一方、攫われたエレンは気を失い、とある部屋のベッドに横たわっていた。気を失っている中、彼女は夢を見ていた。


 夢の中にいるのは、エレンただ一人…。周りを見渡すと、床や壁、天井まで、水晶かガラスで出来ている部屋…否、部屋というよりも、巨大な結晶の中に閉じ込められている、と言った方が適切だろうか。不規則にカットされた面が光を反射し、七色に輝く、美しく、それでいて孤独な結晶空間。

 何が起きるか、じっ…と静かに様子を見るが、何も起こらない。エレンはだんだん不安になり、この空間から脱出しようと考え、自分の出来る限りの魔力で壁を破壊しようとする。しかしその直前、今まで自分一人しか居ないと思っていた空間に、あたたかい人の気配を感じた。


「…っ誰…?」


 振り返らずに、その気配に声をかけた。しかし、返事が返ってこない。気のせいだったのか、と後ろを振り返ろうとしたが、そっと肩に手を置かれたことで、それが阻まれてしまった。ただ、エレン自身も驚いたことに、急に手を置かれたというのに、全く『怖い』と感じなかった。その手のあたたかさに、むしろ安心しきっていた。

 そして、手を置いた者が一言だけ囁いた。


『…彼を、信じてあげてね…』

「…えっ?」


 その言葉の意味がわからず、思わず振り向いたが、夢はそこで終わってしまった。目が覚めても、エレンはしばらくの間、呆然として動けなかった。ふと我に返り、部屋の様子を伺いながらゆっくりと上半身を起こしていく。

 と、その時、自分の体の下で何かがもぞもぞと動いた。くすぐったい感覚に、何事かと急いで起きる。


「みゅっ!?」

「えっ!?」


 すると、エレンが飛び起きたことで、下に潜っていたものが勢いよく転がり出てきた。勢いのついたまま、コロコロと広いベッドの上を転がっていくものを見て、エレンはとっさに手を伸ばした。そして、ベッドから落ちる寸前のところで、"尻尾"を掴んで止めた。エレンも転がっていたものも、安堵の息をつく。


「ミント…一緒に捕まっちゃってたのね…ごめんね、尻尾痛くない?」

「みゅ!」


 飛び出してきたものがミントだとわかり、安心するエレン。両手にミントをのせ、ベッドの上で座り込む。


「…それにしても、ここは…? エデンの本部…よねぇ…?」

「みゅ~?」


 小首をかしげるエレンにつられて、ミントも首をかしげる。辺りを見渡すと、何処かの宮殿か高級ホテルの一室のような、高級感あふれる家具が置かれ、どれを見ても手入れが行き届いていて、清潔にされた部屋だった。エレンが今座っているベッドも、キングかクイーンサイズくらいではないか、二人入っても余裕のある広さで、天蓋まで付いている。敵の本拠地に攫われたということで、彼女は薄暗いイメージを持っていたのだろう。見事にイメージを覆され、戸惑っていた。


「やっぱり外では見張られてるわよね…どうしようか…」

「みゅみゅ?」

「…こんなところにまで巻き込んでごめんね、ミント…」

「みゅ? みゅ~う」


 エレンが謝ると、ミントは首を大きく横に振って答えた。


「ふふ…ありがとう」

「…みゅっ!?」

「ミント? どうしたの?」


 …と、和やかな時間も束の間、ミントが突然、部屋の扉へ目を向けた。エレンが話しかけても、ミントは扉から目を離さないまま、少し威嚇しているようにも見える。

 そして…


──コンコンっ


「!」


 扉が軽くノックされた。エレンも、ミントと同じく身構える。


(…私をここへ連れて来た本人…? それとも…)


 相手の出方を伺うため、じっと息を潜め待つ。しばらくの静寂の後、再び扉がノックされる。エレンは静かに、足音も潜めて扉の脇へ向かった。

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