出動
「セーラちゃんは、ボクの大花盤に一緒に乗ろうか」
出動口には、アールをはじめとするグループが準備を整えていた。そこでキミーが、セーラに自分の大花盤に乗るよう示した。
「アールくんと一緒だと、振り落とされちゃうかもしれないからねぇ…はは…」
「…そうなんですか?」
「そりゃあ…フルスピードで飛ばしていくんでしょ? アールくん?」
「もちろんです」
「わ~…即答だねぇ…わかってたけどさ…」
「一刻も早く、エレンを取り返さないと…」
「その気持ちはわかるけど…」
「キミーさん、あたしもアールさんと同じスピードで行きたいですっ」
「えぇえ!? 何を言ってるのセーラちゃん! 危ないよ!」
「この任務自体、危険を承知で行くんですから、これくらいどうってことないです」
なんて頼もしいのだろうか。セーラのその言葉を聞いて、口をポカンと開けて驚いているキミー。その後ろでアールは、どこか安心したように、うっすらと笑みを浮かべていた。
「…じゃあ、ちゃんとついて来てくださいね。キミーさん」
「えっ…えぇえ!? フルスピード決定なの!? 他のみんなはどうするの!?」
「おれたちは、後続の班と同様に、相手が襲撃してきた際の迎撃に専念します。到着したら連絡を入れますから、その時に皆さんが集合している場所を教えてください」
「デルフィノ君! それはまた危険すぎ…」
「大丈夫ですよ。デルフィノだって、厳しい訓練を受けているんですから。任せて大丈夫です」
「えぇ~…ボク、スピード出すの苦手なんだけどな…」
アールたちの会話を聞いていたデルフィノも三人の話に加わり、アールとキミーが、セーラを連れて先に敵地へ向かうことになった。一人ぽつりと愚痴を零していたが、誰も気にもとめずに準備を進めた。
そんな時、セーラがおもむろにキミーへある質問をぶつけた。
「そういえばキミーさんは、今日は"どこから"帰ってきたんですか?」
「やだな~セーラちゃん。人聞きの悪いことを…」
「今回は、司令官室の机の下から現れたわよね?」
「…毎回思うが、あんたは一体いつになったらまともな出入りをするんだよ…」
「ちょっ…セラヴィ、わざわざ言わなくてもいいだろう…アールくんまで、そんな蔑むように見ないでって!」
「また変なところから入ったんですねー」
「セーラちゃんまで!」
本部に帰ってくる際、毎度のことながら不法侵入のように入ってくるキミーに対し、周囲から冷たい目線が飛んだ。そして少しの間をおいて、セラヴィが一声かけた。
「さあ、ここからは、気を引き締めて行くわよ! アールの班が出動して30秒後に、セイロンの班が出動。その30秒後に、私たちの班が出るわよ!」
「はいっ!」
司令官の支持に、全員が答える。先ほどの雰囲気は微塵も感じない。皆、真剣な表情だ。そして、各々の大花盤に順に乗り込み始める。
すると、アールのもとへ、セラヴィが駆け寄ってきた。
「アールっ」
「はい?」
「…くれぐれも、無茶だけはしないで」
「!…はい!」
アールは一瞬戸惑ったが、はっきりと返事をした。セラヴィの、普段おっとりとした瞳からは、心配と不安と、"必ず任務を果たす"といった、多くの意味が見て取れた。
「それじゃあデルフィノ、任せるぞ」
「はい、先輩もお気を付けて」
そして──…定刻。アールと、セーラを乗せたキミーの大花盤が、先頭で最高速度で飛び出して行った。それに続き、他の隊員たちも、様々な色のネオンの尾を引きながら、敵地へ向かって飛び出して行った。
エデンとの因縁は、エレンに関係することだけではない。何人もの秘密が明らかになるまで、秒読みとなった。




