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花宝石の箱庭  作者: 琴花翠音
第一章 神の力を求めて
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始まりの伝承

『──…このフルール・ミロワールには、長い歴史と伝承があります。少しだけ、その昔話をしましょうか……


フルール・ミロワールが誕生したばかりの頃、人々はまだ魔力を持っていませんでした。そのかわり、素晴らしい知恵を持ち、自然を壊さぬよう、多くの文明を築き上げてきました。


自然の中には、たくさんの"魔珠"がありました。魔珠は物質とも生物ともとれる、不思議なもの。世界の植物が美しく育っているのも、この魔珠たちのおかげなのです。


人と魔珠、互いに尊重し合い、共存しているのでした。


しかし、ある日突然、世界中の魔力が急速に衰えていったのです。

はじめは、人と魔珠が互いに、一方が占領していっているからだと考え、不穏な空気が流れていましたが、しばらくして別の者の仕業であることに気付きます。


定かではありませんが、その黒幕として挙げられた名が”黒百合”、であると今の私たちに言い伝えられています。


彼女は異世界の者。別世界をも暗躍しようと目論み、この世界を標的にしました。

当時の人々は、魔力を持っていなかったため圧倒的な力に絶望し、魔珠たちは、各々の力を発揮できず苦しんでいました。


すると、一つの魔珠が輝き、一人の人間の体内に入っていきました。次々と人と魔珠がひとつになり、人も魔力を持つようになりました。これが、今の私たちの始まりです。


そうそう、忘れてはいけないことがありました。魔珠の中でもとても貴重な存在、”華魔珠”という大きな魔珠が、この世界には"二つ"ありました。

この二つは、世界で一番高い山の頂に祀られてあったので、人が近づくことは滅多にありません。

それでは、この華魔珠は黒百合姫が暗躍し始めている中、どうしたのでしょう?


人々が魔力を持ち合わせても、当然のように強大な力の前では歯が立ちませんでした。

そこで山の頂から眩い光が放たれ、二つの華魔珠が二人の美しい男女へと自ら姿を変えたのです。

そして二人は大きな翼を広げ、空へ高く高く舞い上がりました。不気味な、黒く厚い雲に覆われてしまった世界の空。その空に向かって、二人は両手を掲げました。


すると、隙間なく敷き詰められていた雲から光が一筋差し込みました。世界中を覆っていた雲に次々と切れ間が出来、光の筋が何本も大地に降り注いだのです。

さらに女性が手で大きく払うようなしぐさをすると、あっという間に雲が晴れ、光のベールが世界中を包み込み、男性が空へ向かって光の玉を打つと、玉が弾け、世界中に七色の雨をもたらしました。


光のベールが以前よりさらに美しい情景を保ち、七色の雨が衰退していた魔力をもとに戻してくれました。

この二人のおかげで、フルール・ミロワールは救われたのです。


世界を救った後、二人は神として崇められ、女性には"エレノア"、男性には"アリュール"という名が授けられました。エレノアとアリュールは、華魔珠が祀られていた山の頂に戻り、世界の平和と安定を見守っていました。

彼らは、度々町へ降りては人との交流を深めることもし、さらには、次第にお互いを愛するようになりました。

そしてのちに彼らが残していく子孫も、行く行くは同じ運命を辿っていくことになるのでした…


これが、私が聞いた、我が家に伝わるこの世界にまつわる言い伝えです。

私も大まかなことしか聞いていないので、だいぶざっくりとした内容だったでしょう?

でもこの言い伝えは、今もまだ続いているそうなんです。

現代に生まれた彼らの子孫は、一体どんな運命を辿るのでしょうか…?


これは、花のように美しくも儚い物語です──…』



by 世界の案内人

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