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4:凶行Ⅱ

 それぞれに襲う狂剣。アルは悠々と避わし距離を取る。アニータも同様だ。そしてドゥーガルは避けることもしなかった。


「もらったぁ!」


 部下の一人である金髪碧眼の男。サーベルを上から振り下ろして、自分の勝利を確信する。だが、勢いよく斬り込んだ刃先は、ドゥーガルの眼前でピタリと止まる。


「なっ、ぐくっ、お前、何をした?」

「魔法に決まってんだろ」


 ギリっと歯を食いしばり、金髪の男は振り下ろした刃に力を込める。カタカタと震え、力の拮抗が起こっていた。けど妙なのは、何もない空中で止まっていること。そして、ドゥーガルは笑みを零し、悠長にもポケットに手を突っ込み何もしていないことだった。


「なるほど。自律起動型の人形か」

「ようやく気付いたか」


 徐々に視覚化される。刃先を受け止めるのは黒い腕。僅かに白い光を帯びる腕が、少しずつその姿を露わにしてゆく。目に見えるようになったのは腕だけではない。ドゥーガルと変わらない身長。いや、少しだけ勝るくらいの黒いブリキ人形が姿を表す。

 いや、ブリキ人形というのは正確な表現ではなかった。人間らしい様相は全くなく、甲胄にも似た鉄人形である。菱形のような頭部。僅かに分かる位置で眼のような切れ込みが白く光った。


「俺の魔法、操り人形(クレイマン)だ。以後よろしく」

「ふっ」


 金髪の男は、タネが分かれば何のことはない。そんな余裕の表情を取り戻し、一旦刃を引いた途端、今度は斬り上げるように振り抜く。


「おっと」


 ドゥーガルとクレイマンが飛び退くように後退する。あっさりと剣戟を躱してみたが、もう一度受け止めるのは無理だったのかと私は疑問を抱いた。


「何故躱した。もう一度受け止めればいいだろう?」

「馬鹿言うな。その剣、いやあんたも魔法を使ったろ? 危うくぶった切られるとこだっつーの」

「なるほど。見えていたか」


 敵も私と同じ疑問を口にするけど、理解度は遥かに違っていた。金髪の男が剣を構える。その剣は目に見えて赤く光る。オーラを纏うようにして剣は赤く染まっていた。


「強化の魔法か。シンプルで分かりやすいな」

「戦いにおいてシンプルなものほど強いのだよ。敵が防御出来ないほどの攻撃力。逃げられないほどのスピード。それさえあれば勝利出来る。このようにな!」


 敵は弾けるように距離を詰める。ドゥーガルも反応はするが、その動きは遅れていた。構える。対して振り下ろす剣。対処することに注意を向けるが、切れ味が増した剣は瞬時、消え失せる。クレイマンを囮に前に出させるが、敵の姿はクレイマンを素通りしてドゥーガルへと襲う。


「っ……」


 一瞬消えたように映る敵のスピード。最初の攻撃とは決定的に変貌していた。クレイマンの動きを置いてけぼりにして、直接本体を畳み掛ける。


「ちっ」


 右側面から迫る刃。ドゥーガルの身に触れる手前、黒いものが間を遮る。クレイマンの腕である。前方を向いたまま腕だけを背後に伸ばした、とても人間の構造では防ぎきれない態勢で、クレイマンは機能する。驚くべきはクレイマンの腕は護りではなく、カウンター狙いで敵を攻撃したことだ。剣と相対するようにクレイマンが拳を敵に放つ。


 軽傷は覚悟の上だろう。バトル漫画で見たことがある。肉を切らせて骨を断つという奴かもしれない。だが、敵はそれすらも反射的に見切ったのか。クレイマンの腕は斬り飛ばされ、クレイマンの拳は不発に終わった。


 ガシャンと音を立て黒い腕が地に墜ちる。ドゥーガル自身にダメージはないが、それも時間の問題という空気が漂う。ドゥーガルは黙って敵を見据えた。


「操り人形とはよく言ったものだ。およそ人間の関節では不可能な動きも思いのままというわけだ」


 あまりに短い攻防のなかで、ドゥーガルは自身の魔法の真髄を見透かされる。それが図星であるかのように、ドゥーガルは沈黙を貫く。


「だが、特性は理解した。今度はそれを承知の上でその首を狙おう」

「……」


先程と同様に、敵は素早い動きで翻弄する。僅かに見える赤く鈍い光。それが男の脚部に及ぶ。先程と同様に自身の脚を強化して数倍のスピードを顕現していた。


「パワー、スピードがあれば勝てると言ったな。戦いはそう単純なもんじゃねぇぞ」

「戯言だ」


 距離があるところから見た私には分かる。敵は瞬時にドゥーガルの後ろに回り込む。ドゥーガルは気付いていないのか。反応しきれていないのか。敵に背後を取られたまま微動だにしない。声を上げるより早く、敵の剣の振りは速かった。


「……がはっ!?」


 だがどうしたことか。呻いた声を上げて倒れ込むのは敵のほうだ。剣を落とし、衝撃を受けたように体を浮かせて転倒した。


「な、何だ。今のは……」

「こいつだ」


 ドゥーガルは得意気にサングラスを中指で押し上げる。空いたもう一方の左で宙を指す。その先には黒い腕が浮いていた。


「まさか……」

「そう。言ったはずだぜ。俺の魔法。操り人形クレイマンだってな」


 切り落とされたクレイマンの腕。それも含めてドゥーガルは操作することが出来る。背後を取られたと見せかけて、いや、自身を囮にして敵の視覚から渾身の拳をお見舞いしたのだ。


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