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2:魔女姫の世界Ⅷ

 既に見破られていることに観念したのか。アルはその目的を話した。魔女姫を倒すという目的を。だが、エルムの反応は思わぬものだ。


「ぷふっ……あはは、あっはっはっはっは!」

「……っ!?」


 魔女姫を倒すと聞いた途端、何とエルムは、吹き出したあとに笑い転げてしまった。事情をよく知らない私からしても、いやだからこそ不可解だった。私は疑問に感じたまま、エルムに尋ねる。


「な、何がおかしいの?」

「そら、おかしいさ。せいぜい国税を収められないから逃げ出そうとしてたとか。泥棒して飢えを凌いでたとかと思ってたのに。まさかそんなことを考えていた奴がまだいたなんて。そんな大バカ野郎は、聖十字セイントクロスの連中くらいなもんかと思ってたよ」

聖十字セイントクロス……?」


 素直に答えてくれたものの、またも知らぬ単語が出てきてしまう。アルが即座に簡単に説明を付け加えてくれた。


「昔魔女姫、ひいては国に戦争をしかけた組織の名前だよ。抵抗軍、もしくは解放軍みたいなものだ」

「ふぅん」


 そんなこともあったのか。けどそれだけ知ってしまえば興味は薄れてしまう。そのせいか適当な相槌になってしまったが、アルは気にせずエルムに訴えかける。


「信じられないならそれでもいい。だがそれが俺の目的だ。それでも君は手伝うと言うのか。それともハンターらしく、謀反を企てる俺を捕まえるか?」

「え?」


 重く言葉を発するアルに思うところがあったのか。ようやくエルムも笑い転がるのを止め、面を上げた。そして、対面するようにベッドの上で座り直す。


「……いや、しないかな。言ったろ。命の恩人にはちゃんと恩義で返す。それに、ハンターと言えど私だって、国……いや魔女姫たちを良いようには思ってはいない」

「そうなのか?」

「そりゃ、犯罪者や国、もとい魔女姫の意向に逆らった奴らを取っ捕まえるのもハンターの仕事だけど。さっきも言ったように私は食べていく為にやってるだけだし。どっかのバカみたいに、魔女姫を信仰してやっているわけじゃない」


 あまりにもはっきり言いのけるエルム。こちらが目を反らしてしまいそうになるほど、真っ直ぐに顔を向けていた。

 多分、嘘は言ってないんじゃないか。私がそう感じられたのと同様に、アルも同じことを思ったのかもしれない。はたから見ても明らかに警戒していたアルは、ついにエルムの同行を認めると口にした。


「分かった。それなら一緒に来れば良い。危険に感じたならいつでも離脱すればいいさ」

「上等。まさか魔女姫狩りをすることになるなんて思わなかったけど、狼なんかよりよっぽどやり甲斐が出てくるね」


 エルムは嬉しそうに表情を緩ませた。物言いは物騒なことこの上ないが、時折見せる無垢な表情は、やはり幼さを印象付ける。


「それじゃ改めてよろしく。さっきも名乗ったけど、エルム・T・シャルロットだ。あんたたちの名前も教えてくれない?」


 スッと右手を差し出してくる。アルもそれに応じて握手を交わす。


「……アルフレッド・グラデミスだ。アルと呼ばれることが多い」

「それじゃ私もそう呼ぶよ。そんでそっちは?」


 私のことだろう。話の流れから、私も打倒魔女姫に一員だと思われていると感じた。こういうのは最初が肝心だろう。


「私は神條彩芽。呼び方は好きにしてくれたらいいけど、私は魔女姫を倒そうとはしてないから」

「え? そうなの?」


 眼を大きくさせるエルムの反応を見るにやっぱりかと思えた。けど、これで私の代わりが出来たようなものだ。一応説明しとこうと思った。


「うんそう。魔術……法帝とかに会うまでは同行すると思うけど、途中で私は抜けさせてもらうことになると思う」


 私もエルムに負けないくらいにはっきり述べると、エルムはアルのほうに視線を動かした。アルにも確認を取っているんだろう。察したアルも、「アヤメの言う通りだ」と答えた。


「ふぅん。それならそれで途中までよろしくってことで」


 割り切った性格らしく、エルムはそれ以上さして追及することはなかった。アルと同じように私にも右手を差し出してきた。ありがたい。そして、やりやすいと思った私は、素直にその申し出に応じることにして右手を伸ばす。交わした瞬間、どうしたことかエルムの表情が歪む。そして妙なことを口にした。


「っ……あんたも何か、普通とは違うみたいだね」

「え?」


 驚いて、私は手を引っ込めてしまう。いったいどういう意味なのか。その瞬間、アルがクスッと笑みを零したような気がしたが、表情を視認するには及ばなかった。


「今の、どういう意味?」

「さぁ。私には詳しいことは分かんなかったけど。何か妙な力を感じたんだよ。どうやらアルだけじゃなく、あんたにも興味が湧いてきたよ。アヤメ」

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