プロローグー旅立ちー
「魔王、ライド。1週間前に先代魔王が死に、魔王に就任しますが、1年後に、勇者に殺される運命になっております。」
俺の魔導書のレイは、ぼさぼさの青い髪をゆらし、眠たそうな目をこすりながら、それでもきっぱりと何の感情も込めずそう言った。
うん。レイはこういうやつだ。こういうやつだと分かっている。そう、たんなる冗談なのだ。反応を見て楽しもうと・・・
「嘘ではありませんよ。完璧に真実です。私の言うことは絶対です。」
は、反応を見て楽しもうと・・・。
レイはニヤリと口角をあげた・・・。
俺は魔王のライドだ。1週間前に俺の親父である先代魔王が死に、俺が魔王に就任した。
親父は伝説の魔導書であるレイをおいて、超充実していた人生を終えた。
そして魔王に就任してから1週間、そろそろ何か行動をおこそうかな、といったところで、これだ。
レイは伝説の魔導書と呼ばれている。だから、どんな姿にでも変身できるし、なんなら運命を変えることだってできるのだ。
だから、レイの言うことは本当に起こること。そう決めつけたとしても過言ではないのだ。
そんなレイが俺が1年後に死ぬと言った、ということは・・・。
「レイ、俺本当に死ぬのか?」
「死にます。」
「何をやってもか?」
「死にます。」
「勇者を倒しても?」
「もう、見るのも耐えられないくらいの死に方で、死にます。」
ゆ、勇者を倒しても死ぬってか。
恐るべき勇者。
だったら、俺は何もすることがなく、勇者に簡単に殺されてしまうのか?
それだったら、殺されるのを待つような物ではないか。
俺はできるだけ格好良く見えるようにマントを飜した。
「何か手が打てるかもしれない。ひとまず、勇者のところに行く。」
おお、我ながら決まった。
だが、そんな俺とは違って、レイは何の感情も込めずこう言った。
「どうせ死ぬので、行くだけ無駄ですよ。」
レイはうっとうしそうにため息をついた。
温度差が違いすぎる・・・。
俺は気を取り直して、レイに聞いた。
「レイ、そういえば勇者はどこにいるんだ?」
レイは淡々と言った。
「勇者は一週間後に、聖王国で一番大きい協会、中央協会で、精霊に選ばれた剣士と魔法使いと合流し、魔王を倒しに出発します。まあ、今はきっと、旅に必要な道具などを買いそろえているはずなので、聖王国の中心部にいると思われます。」
レイは役に立つな。それじゃ、出発しよう。
俺は出発しようとしたが、すぐにレイに止められた。
「・・・どこから行くつもりで?」
「いや、聖王国につながってる、魔の海からだけど?」
「・・・。」
なぜだろう。
魔の海は、俺の城と聖王国の城の境目にある海だ。
魔の海と言うだけあって、向こうから魔の海を通ってわたってくるやつは一人もいない。
きっと、海に入ったら死ぬ、とかそういうやつなんだろう。
だけど、魔の海、だから、俺は通れるんじゃないか、ということで、魔の海を通るつもりでいた。
だが、レイが黙り込んだってことは・・・。
「魔の海は、魔王様でもとおれません。もちろん、勇者も通れませんし、この世界にいる誰もが通れないと思います。」
やっぱりそうか。あの海は通れないってことか。
なんで魔の海ってつけたし。
まあいっか。
ということは、やっぱり?
「まあ、遠回りになりますが、陸上を通っていった方が安全かと。」
いや、お前が通れないって言ったんだろ。
まあ、よい。そうなるわな。
「では、出来るだけ早く出発しましょう。道案内は承りましたよ。」
レイは早速行く気でいるようだ。
さ、俺も行くかな。
魔界のことは俺の次に偉い、コスモにまかせて、俺は魔界のため、(それと自分のため)に、人間界に旅立つことになったのだった。