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血を結ぶ

「__もう一度、言っていただけますか……?」


御年、50歳になる伯父上は奥様方にモテるほどの美形である。滲み出る渋みや紳士的な振る舞いが奥様方にはグッとくる、曰く近所のおば様方の評価である。そのお方が我等が神桜一族の筆頭長なのだがいきなり爆弾発言を落とした。


「聞いていなかったのかい?しょうがない子だねぇ」


優しげに細められる瞳にいつもならにこやかに微笑みを返していただろうが今日は違うっ!


「__凛、こいつと契りなさい」


伯父は隣に座っているこの世のモノとは思えないほど美麗なひとを指差して笑った。

確かに、私みたいな女に貰い手などいないから有り難いがそれとこれとでは話が違う!!

だって、だって___


「こいつ、鬼っ!!」

「……鬼でも婿入りくらいする」


淡々と嬉々として話す伯父の隣のひと__鬼を指差して叫んでしまっても誰も咎めやしないはず……。



私、神桜凛は魔を払うものとして代々受け継がれてきた一族の今は亡き先代長の娘である。

昔から鬼とは狩って狩られるという敵対関係だったのに___!

私が記憶している魔との記憶を引っ張り出しても友好関係が築けたのなんてない。いくら伯父でも争いの火種をわざわざここに持って来るなんて。何より、このことを一族の人等が許すわけがない。

__なのに何時の間にやら何故こうなった。

伯父を真正面から見据えてアイコンタクトをはかるけれど


「凛、見る相手が違うのではないかい?」


にこやかにスルーするな、このくそ親父っ__!


ぐっと術を繰り出してしまいそうにのるのを抑える私を見てまた笑みを深くする。おいこら。


「さて、邪魔者は退散しようかな。凛、澪に鶯谷の間を教えてあげなさい。」


伯父は私に反論の隙を与えず、さっさと出て行ってしまった。音も立てず閉められた襖を暫く見て私はゆっくりと彼、目の前にいる鬼に向き合った。無駄に静かな空気が流れる。


うわ、気まずい。こんなのガラじゃないのに__。


「えーと、私は神桜凛。貴方は?」


少し色素の薄い肌

それに加えて紺の髪色がよく目立つ

瞳は紫金でなんとも言い難い光を放つ。一瞬誰かと既視感を覚える。

青年は少しばかり私を驚いたように見つめて声を口にした。


「俺は、澪。一応は真名だが……あまり使わないでくれると有り難い。」

「澪?いい名じゃない。まぁ、鬼にも色々ありそうね。」


一応、真名は魂を縛るものだから鬼にとっては弱点にもなる。そんなの私に教えてもよかったのか、なんて問わない。


「じゃあ、なんて呼べばいいの?」

「……君の好きなように。」


少し目を伏せる姿はなんとなく儚さを思い出させる。あぁ、そう言えば__


「朝顔は、儚い恋だった。白詰草は約束。竜胆は正義感………鈴蘭は繊細………」


思いつくまま、彼から取れるイメージの花詞と花を口にしていく。あぁ、後は……。


「雪柳、静かな思い……。そうっ!雪柳!」


彼と、繋がるモノ。目の前にいる彼が初めからそう呼ばれていたような気がしてくる。


「あなたは、雪柳。どう?いや?」

「……いや、じゃない」


美しい、青年はふっと優しい笑みをもらした。それがあまりにも綺麗で見惚れてしまった。そっと印をくんでいた指をはずして気を抜く。襖の側に待機させてある式も少しばかり緩めて、彼を見る。鬼、という最初の区別を少しだけ緩ませる。まだ知り合ったばかりで正直手放しで歓迎が出来るわけでもない。

けれど__


「私は、貴方を歓迎するわ雪柳。

それと私のことは凛でいいわ」


にこりと笑って手を差し出す。それくらいは大丈夫。彼、雪柳も戸惑いつつもゆっくりと重ねた。


「さてと。貴方を鶯谷の間に連れて行かないとね。」


揺れる紫金の瞳は見ないフリをして雪柳と部屋の外にでる。外には恭しく私の式が頭を垂れている。しゃん、と扇子を鳴らすと靄のよう消えていなくなる。雪柳は驚いて私を見ていてそれに少し苦笑いを漏らす。


「私たちは、式と呼ばれるモノを使役するの。それならば貴方もわかるでしょう?」


鬼、ならば私たちと一戦交えたこともあるはず。大抵の一族ならば式を一対だけ使役する。


「寄り代は自らが使う、そこに宿る式は自らの分身、に近いかな。」


私の寄り代は蒼い扇子、音が鳴るのは扇子についている鈴の音。式の能力が高いほど使う者が高位な証。


「だから、貴方が私に危害を加えようものならば私の意志に関係なくこの子たちは貴方を殺そうとするでしょうね。」

「……信じていない、という牽制か?」


少しだけ怪訝な顔をした彼にふっと笑って。


「そうともとれるけど、貴方が何かをしようとするときよ。何もしなければこちらも何もしないわ。私、先制攻撃はしたくないタチなの。」


雪柳は私を見て何かを考えるように黙り込んだ。別に式だけが私の能力ではないから雪柳に話したところで害はない。


「ほら、ここが鶯谷の間よ。今日からあなたの部屋ね。」


襖を開け、雪柳を中に入れる。一応客人用だからある程度は広いしある程度の家具もある。生活するには困らない。


「さて、細かいことは後で聞くわ。とりあえず手っ取り早く契るわよ。」


婿入りなんて、馬鹿げたこと仰る伯父なんかしるか。と思いつつ、揺れた紫金の瞳を深く覗き込んで。彼の心に手を触れて私は能力チカラを動かす。



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