終章
「──まるで無茶苦茶じゃないか! しかも予よりも遙かに強い。想像ができぬほどに強い!」
魔王は玉座のなかで腹を抱えて狂ったように笑い出した。
「爺よ。世界はなんと驚異に満ち、そしてでたらめなんだろうか。予が長年探し求めていた人間は天使の転生体──。しかも子供とはいえ立派な獅子だ」
なんという皮肉。
「そしてその傍らには最強の魔王と魔界有数の戦士である<後家作り>が控えている」
忌み名の魔王は、女帝の再来を思わせるほどの強さだ。彼女を武力で打破するのは至難と言わざる得まい。
<後家作り>も侮れまい。戦士として一流だが、何よりも怖いのは尖角の目から狂気と絶望を払ったことだ。ああいう男は侮れない。
そしてあの幼い天使の転生体も、まだ成長途中の子獅子にすぎないが獅子は獅子だ。
いずれ牙を生やし、予に立ち向かってくることであろう。
面白い。
まったくもって面白い。
この醜く狂気に満ちた世界に生まれ墜ちてこの方、これほどまでに愉快な気持ちになったのは初めてだぞ。
「爺、尖角の一族を召し抱えてやれ。使い捨てにしてやろうとかと思ったが、予に愉悦をもたらした褒美だ」
「よろしいのですか、陛下。あやつ等を抱き込めば、今回の一件安井家にばれるかもしれませんぞ」
「ならば戦士ではなく、忍者として抱えろ。表に出さなければバレんだろう」
「しかし、この大事な時期に──」
「爺! つまらぬ事をゴタゴタと抜かすな」
「申し訳御座いません、陛下」爺は深く頭を下げた。
「それと人間界に行く準備をしておけ」
「陛下! まさか人間界に行かれるつもりですか!?」
「当たり前だろう。君臨するのが魔王の義務ならば、征服するは魔王の快事なり。征服すべき敵が人間界に現れた以上、予みずからが行かねばなるまい」
この冷たくて硬い王座の座るのは飽きた。
「陛下──」爺は止めようとしたが、予の目を見ると諦めた。
王座を安置していた大獅子の顎が開き、声なき咆吼をあげた。
「爺! 死んだはずの獅子も闘争を予感し歓喜しているぞ」
戦争へ。何もかも破滅させる戦争の予感を感じて。
死んだはずの獅子は喜んでいた。
電撃2次落ち作品です。
はじめは恥ずかしいので、改稿やら誤字脱字を修正しながら載せようかと思いましたが、選評みて気が変わったのでそのまま載せることにしました。
こんなんでも電撃2次までいけるんだなと、肩の力を抜いていただけければ幸いです。
ちなみに改稿前のデーターを誤って上書きしてしまったので、完結以外は
改稿したり誤字脱字を修正しています。
ついでに電撃編集部が届いた生暖かい選評も晒しておきます。
評価1
主人公とヒロインをおっさんとおばさんにした思い切りとオリジナリティは
評価します! が・・・・・・それで『誰に楽しんで貰いたいのか』という
ところへの配慮がやや足りていないのではないかと思ってしまいました。
目標とすることが小学生男子の籠絡というのが、特に好き嫌いがはっきりと分かれそう。嫌われそうな奴らが憎めないことをやっている、ならユーモアにあふれていていいのですが、普通に嫌われっぱなしになりそうな感じなので、奇抜な『邪道』をやるなら、そのあたりのケアに一層気をつかってほしい。次の挑戦に期待します。
ストーリー B キャラクターC 設定B オリジナルティB+
文章力B-
総合評価 B-
評価2
もうタイトルからして色んなパロディ入ってます(笑)。
魔王、学園、ラブコメ、異能力、異世界転移、そして兄41歳ハゲで
妹38歳(オタ、ショタ)という通常ならば破綻しそうなごった煮設定を力業で物語に収納しており、〝正月ドラマは英雄ゲオルギウスが定番〟など日本的日常とファンタジーの混ぜ具合がユニーク。ミスタッチのような表現(〝ん〟抜き)とかホントのミスタッチとか些か品性に欠ける下ネタとか小説作法も破天荒なのだが、主人公とキャラを含め何故か取っつきやすく、それがオリジナルティともなっている。
一方エンディングは続きを期待させるものの、やはり尻切れトンボの印象。
時間が足りなかったのかも知れないが、ここは是非とも比留間たちのエピローグが欲しかったところ。ともあれ全体として課題の多い出来ではあるが
とにかく勢いは感じられる。この執筆センスでキャッチー作品を手掛ければ
結構強力なのではないだろうか。それにしてもペンネームが〝南国タヒチ〟
とは・・・・・・(爆)
ストーリーB キャラクターB 設定B+ オリジナルティB+ 文章力B
総合評価B+
作者コメント。
作者としては、文章がC-ではないのが不思議でしょうがありません。
締め切りに間に合わなくて、推敲をしないで送ったので、誤字脱字だらけですw
あと勢いに関しては、作者は結構気にして書いてました。
作者的には、男塾とかキン肉マンとかのああいう作品的な勢いが欲しかったので。
選評の評価が割れ気味なのは、作者的には嬉しかったです。
もともと万人受けする作品を書くタイプではないので。
しかしペンネームにツッコミ入れられるとはw
ちなみにペンネームの由来は、タヒチにダイビングしにいったとき、船に乗り合わせた日本人の新婚カップルに現地のガイドと間違われたことが由来です。