第三の目
久しぶりに続けて投稿です。
徐々に核心に近付いて行ければと。
一人で帰らせるのは危険だからと千鶴と憂里を家まで送り届けた後、事務所に戻ってきた楓と真崎はソファに向かい合って座り、先程の話の続きをしていた。机に置かれたカップになみなみと注がれたコーヒーが白い湯気をたてる。
「それにしても」
真崎が首を捻りながら言った。
「男はなぜ憂里君が千鶴ちゃんを助けた所を見ていたんでしょう」
「さあな。さっきも言ったが、それが偶然だとは考えにくい。ということは、やはりそこで千鶴が襲われることを知っていたっていう線が有効だな」
「それは、千鶴ちゃんを襲った暴漢が“影”に乗っ取られる原因を、あの男が作ったと」
「そうなるな。もしかしてその男、そうなるように仕向けてるのか…?」
「負の感情を纏った人間を“影”に乗っ取らせるように仕向けているってことですか?」
「その可能性は高いな」
真崎が顎に手をあてながら言う。
「…もし男が事件を引き起こす原因を作った張本人だとしたら、“影”が暴走することが予め分かっていてその現場にいたんですね」
「ああ。だから男は、千鶴が襲われ憂里が助けた場面を見ていた。……もしかしたら、あの時のよう、に奴はここ最近起きている“影”による事件の全ての現場に現れているのかもしれないぞ」
「全ての現場…ですか」
「そう。ただ…その現場ってとこが…何か引っかかるんだよな」
「引っかかる?」
楓は腕組みをしてそれが何であったのか必死に思い出そうとするが、記憶は形を成さず、頭の中に霧がかかったようにぼんやりとしている。
「だめだ、思い出せん。それより真崎」
考えることを一旦放棄した楓は、ソファに寄りかかっていた上半身を起こし、勢い良く身を乗り出した。正面に座る真崎に視線を向ける。
「はい。なんでしょう」
「これらを踏まえて頼みがある。それもかなり、面倒な」
苦い顔でそう言った楓を見て真崎は一瞬ぽかんとした表情になるが、すぐに微笑んだ。
「あはは。慣れっこですよ、そんなの」
「悪いな」
「お任せください。で、頼みとは?」
「ああ」
楓は立ち上がって壁際の棚まで行くと、中から一冊のファイルを取り出した。紺色で分厚いそれを持って再び戻ってくると、机の上にドサリと置いた。
そしてパラパラと捲ると、いくつかのページから紙を抜き取った。
それは地図だった。
「…ここと、ここ、そしてここ。こっちのページは、ここと、そこ。あとは…」
そうしてどこからか取り出した赤いペンを使って地図の上に丸を書いていく。それはどんどん増え、数枚の紙はどれも赤丸だらけになった。
「楓さん…これって」
紙を覗き込んでいた真崎が、額に薄っすらと冷や汗を浮かべながらそう尋ねた。
「ここと、ここ。あとここも。そう、監視カメラ」
「やっぱり」
楓が取り出した地図は、街中の監視カメラが設置されている位置を示すものだった。
そして中でも、楓が熱心に赤丸を付けた場所は、今回の数多の事件が発生した現場付近に設置されている所だ。
「それぞれの事件現場の監視カメラを調べて共通して現れる人物を探すんですね。麻木の時みたいに」
「その通り。それがもしかしたら憂里を拉致った男かもしれない。監視カメラを見ればそいつが今までの事件に関わっていたかどうかもわかる」
「…リミットは?」
目を閉じて何かを考えるようにして真崎はそう尋ねた。
「三日で頼む」
楓の答えを聞いて真崎は意を決したように息を吐き出すと、薄っすらと笑みを浮かべた。
「二日以内で終わらせます」
真崎の有能っぷりは書いてて楽しいです。相変わらず楓さんは人遣いが荒い。次回、「真崎、寝不足になる」をお送りします。
読んでくださりありがとうございました〜。




