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Black Rumor  作者: 東
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疑問点

やっと回想から抜け出せました。

どうぞ!


「ってな感じで、ここまで戻ってきたわけです」


伊万里は千鶴と別れてからの出来事を全て話し切った。


「お前ってほんといつもいいとこ持ってくよな」

「あ〜わかるわかる」

「そんなことが何度あったか」

「ほんとにね〜」


楓と三代は交互にそう言いながら、不機嫌な顔の京馬を恨めしそうに見つめる。

そんな大人組の話など聞こえていないかのように、千鶴は安堵の息を吐き出しながら、


「伊万里ちゃん……無事で良かった……」

「ごめんね千鶴ちゃん、心配かけて。でも千鶴ちゃんも無事で良かったぁ」


伊万里は申し訳なさそうに謝ると、すぐににっこりと微笑んだ。



「で。京馬達(おまえら)のことは大体わかった。蟲型の問題も一旦置いておく。で、三代。お前何しに来た?」


腕を組みながら黙って話を聞いていた楓が、隣の三代の方を向きながらそう尋ねた。

何故三代がここへ来たのかという、まだ根本的な問題が分かっていなかった。


「あ?俺?……聞きたい?」


三代は軽やかに笑うと、黒縁眼鏡をキラリと光らせて急に真面目な表情になった。

そしてゆっくりと口を開く。


「あのね、……偶然なんです」


そう言って再びへラリと笑う。

気を張り詰めて聞いていたにも関わらず、そのあっけらかんとした表情と言葉に三代を見つめていた全員が閉口した。

その微妙な空気に、三代は一人ポカンとして辺りを見回すと、焦ったように身振り手振りで弁解を始めた。コロコロと表情が変わる忙しい男である。


「ちっ、違うんだ。なんか起きてるって情報は入ってきてたよ?でもゆっきーがそっち行ってるから上からも特に指示出なかったし、まぁいいやとりあえずって気分で来てみただけなのさぁ」


支離滅裂になりながらも、そう言ってから再び一同を見回す。

一番最初に口を開いたのはやはり、呆れ顔の楓だった。


「あのな……俺としては、桂木さんの話聞いて、お前が来たのは絶対上から指示が出たんだと思ってた。さっき言ってた甲斐さんってのは、"影"の暴走による最初の被害者だ。その人が失踪したとなると、何かしら関係してるとしか思えない。だからお前が調査に来たと思ってたのに……」

「桂木のやつは何も言ってなかったのかよ」


それまで黙って聞いていた京馬が、足を組み替えながら楓にそう尋ねた。


「言ってた。どこかおかしかったって。でもどこが、とかはわからない。確実じゃないんだ」


白い病室で出会った二人の警察官。ベッドに座る甲斐の様子に、おかしなところは無かったか。しかし、あればその時に気づいてるはずだ。

ーーー思い出せ。何でもいいからあの時の様子を。

あの時の病室の様子を必死で思い浮かべ何か不審な点は無かったか探す楓だが、以前も今も、なにも気付いたことはない。楓は頭を抱えた。

そんな様子を見て、


「悩んでても仕方ないでしょ。もう一人の警察官に聴き込みとか、調べられることはあると思う」「そうですよ、何かしら手がかりがあるかもしれないですし」


憂里に続き、真崎も言う。

その言葉に楓は顔を上げると、軽く頷いてから決意したように言った。


「……明日、もう一人の警官に聴き込みしてくる」




***



「んじゃ、話は終わりだな。おい伊万里。帰るぞ」


一番先に立ち上がった京馬は、そう言って扉へと向かった。

伊万里も自分の刀の入った袋を掴んで立ち上がった。そして千鶴に手を伸ばす。


「行こ!千鶴ちゃん!私がちゃんと家まで送り届けます!」

「え、でもそんな」

「いいの。まだ外は危ないかもしれないから」

「ええと、ありがとう」

「いいえ!」


そして千鶴も立ち上がると、まだ座ったままの三人にお辞儀をした。

「あの、本当にありがとうございました。失礼します」

千鶴は伊万里の待つ扉へと小走りに向かった。そして京馬の後に続き、二人して事務所を出た。



エレベーターを降り、ガラスの扉を押して外に出た三人。

伊万里は千鶴の家の方向へ、京馬はその反対方向へと向かう。

その別れ際、千鶴はじゃあなと言って去ろうとする京馬を呼び止めた。


「あの……京馬さん」

「あ?」


そしてキョトンとする伊万里を置いて京馬の方に小走りに駆け寄ると、小さな声で言った。


「あの、京馬さんに……お礼を言わなきゃいけないと思って」

「俺は何もしてねぇぞ」

「伊万里ちゃんを助けてくれたので」


京馬の目を真っ直ぐ見ながら、千鶴はそう言った。

京馬は一瞬動きを止めてから、ふっと息を吐き出した。


「お前が気にすることじゃねぇ。昔からだ。俺があいつを助けることなんて」


そう言って千鶴の頭にポンと手をのせると、


「じゃあな」


と再び言って踵を返した。

遠くなる背中に頭を下げ、千鶴も伊万里の元へと戻る。


「なあに?千鶴ちゃん師匠と何話してたの?」

「大したことじゃないよ」


不思議そうな顔で千鶴を覗き込む伊万里に、千鶴は静かに微笑んでそう言った。


「なに?なに?気になるー」

二人の少女は、楽しそうに笑いながら歩き出した。遠くで聞こえるサイレンの音なんて聞こえていないかのように。




あっという間です。

読んで下さりありがとうございました!

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