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Black Rumor  作者: 東
24/77

襲撃

千鶴ちゃんピンチ。


「なに………」


千鶴は座り込んだまま呟いていた。



"それ"が起こったのはついさっきだった。


楓の事務所を出て、裏通りを歩いていた。辺りは暗く、人通りは無い。

決して安全では無いが、表の駅に向かう多くの人々の中を歩くことと比べれば、と裏通りを選んで歩いていた。


(前も似たような道歩いてたな…)


住宅街を抜け、角を曲がり、使われていない廃ビルを横切ったその瞬間。

"何か"が千鶴めがけて"飛んで来た"。



一瞬の出来事だった。

突然、背中から嫌な気配がした。何かはわからない。千鶴は反射的に地面を蹴っていた。それと同時にヒュッ、という音が耳元で鳴ったのがわかった。


そして、次の瞬間には自分の身体が浮いていた。


すぐ近くで激しい音がして、千鶴は地面に転がる。硬い地面は痛くて、その衝撃で確実に腕や足が擦れているだろう。

パラパラと小石が散って、起き上がった千鶴は思わず呟く。



「なに………」



ふと自分の足を見ると、やはり膝やふくらはぎの側面から血が流れていた。

いくつもの鮮やかな赤い筋を作るそれを見て、千鶴は我に返る。


「何が…。えっと…帰ってて…それで…」


必死に状況を整理する。

楓の事務所を出た。人通りを避けて、裏の道を歩いていた。突然、背後から何か嫌な気配がしたと思った瞬間、吹き飛ばされた。


そして起き上がって、今に至る。

大きな音はしたものの、立地のせいか人の現れる気配は無い。



ふと何かが視界に入った。

自分が座る数メートル先。

さっきまでいた場所、その地面にはヒビが入っていた。硬い硬いコンクリートに、大きな亀裂。

そしてそこに、"何か"がいた。

視界に映ったのはそれだった。

薄暗がりの中、必死に目を凝らすと、それは確かに動いていた。


見たことがある。



"影"だ。



どうして。

人は?

いない。


千鶴は必死になって考え、そして辺りを見回す。


今飛んで来たのはあの"影"か。

でもあれは人に巣食うものではなかったのか。

人の醜悪な心から生まれる黒い"影"。

それは人の周りに纏わり付いている所しか見たことが無い。

それなのにどうして…?


亀裂の入った地面に目を戻すと、そこにいた"影"が蠢いた。

ズズズ、と音をたてて。

そしてブワリと広がった。

生き物だ。

幼い頃から見た人の周りに纏わり付いているときも、そして今もそう思った。

もはや意思を持つ生き物なのだ。



千鶴は痛む足をなるべく見ないようにして立ち上がった。気にしたらもっと痛みが酷くなるような気がして、視線を黒い"影"に向ける。

人一人など余裕で覆い尽くせるほどに広がったそれは、千鶴の視線に反応するかのようにユラユラと蠢く。

そして一度大きく揺れたかと思うと、次の瞬間、またしても千鶴めがけて襲いかかって来た。それも恐ろしいほどの勢いで。


「ぅわっ…!」


痛みを忘れて反射的に走り出すが、背中を向けてはいけないと思い慌てて振り向き、対峙する。

膝から流れる血液が脛を伝う感覚が気持ち悪い。確実に、ずり落ちた黒いソックスに染みているであろう。白ソックスじゃなくて良かったなどと場違いなことを考える。


勢いを増した"影"が向かってくる。

空気を切り裂く音。

千鶴は既のところで文字通り必死に身体を捻り、それを避けた。

間一髪で躱した"影"は、千鶴を通り越して背後に留まり、不気味に蠢いている。

(…来る)

体勢を立て直して次の一撃に備えようと右足を地面に付いた途端、電流にも似た痛みが全身を駆け抜けた。


(ーーあ。)


バランスを崩した。右足から崩れるようにして転んだ千鶴は、地面に手を付く。


「痛…っ」


思わず呟いて、両手の砂利を払う。

地面から顔を上げた。

"影"がもうすぐそこに迫っていた。


大きく広がったそれは蝙蝠(コウモリ)の大群のようだった。

黒い翼を広げて、千鶴を飲み込もうと押し寄せる。



(痛みなんか気にしてる場合じゃ無かったなぁ…)



あぁ、どうしてこうなったんだ。


千鶴は自分の運命を呪った。

このまま終わるなんて。

わけもわからないまま死ぬのか。



視界に黒が広がる。

千鶴は静かに目を瞑った。




どこで切っていいかわからなくて、とりあえずここで更新。

次からの話にかなり悩んでいます。助けて。

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