"勘"そして真実
またまた更新。
続けてどうぞ。
「結局あの人、何だったんですか?」
桂木が部下からの呼び出しで事務所から帰った後、千鶴は来客用のソファに憂里と隣り合って座っていた。
会って間も無く、自分の他とは違う"体質"を見抜くなんて。
千鶴が驚くのも無理は無い。
その質問に、楓は苦笑しながら不意に窓の外を指差した。
「…こっからすぐの駅を反対に行ったところにデカイ警察署あるだろ?桂木さんはあそこの警部で、俺の古い知り合い。ああ見えて三十路越え」
「えっ」
「まあそんな情報は置いといて…あの人を一言で言っちまえば、"ものすごく当たる勘の持ち主"、だな」
そういえばさっきも自分自身で言っていた。勘、だと。
ありえない、と千鶴は思ったが、千鶴自身の力、憂里や楓の力を考えると、ありえないことなどありえないのだ。
「まあ勿論それだけで警部って肩書き持ってる訳じゃねぇけど、あの人の"勘"は本当に当たる。大体が、=真実なんだよ」
「それは、すごいですね…」
「でも、あの人の勘は"結論"を当てるだけだ。俺達が実際何をやっているのかは分からない。いくら桂木さんの勘を信じたって"俺たち"が関わっているっつー《証拠》が無いから警察は動きようがない」
「なるほど…」
「まあ、桂木さんは俺達をどうこうしたいって訳じゃないだろうしな。あの人的には真実を知りたいだけなんじゃないか…と」
あんな風に見えて意外と真面目に警察官しているんだなあ、と本人が聞いたらケラケラと笑い出しそうなことを千鶴は考える。
「それでも色々掴まれるとこっち的にもやりにくくなる。だからやり過ごすことに専念してるってわけ。でもまああの人からしたら俺たちが関わっているのは確定してるだろうな、ははは」
それって笑い事なのだろうか、と千鶴は内心思ったが、楓が大丈夫ならそういうことなんだろう。
「そういえば千駄ヶ谷さん、今更だけど何で俺がここにいるって?」
「あ…。なんとなく。黒羽君の家は知らないから、こっちならと思って」
「そっか。でも遠回りだったでしょ?」
憂里がそう尋ねた。すると楓が口を挟む。
「いや、ちょうど良かった。お前らに話したいことがあったから」
「話したいこと…?」
楓は不意に真面目な顔になった。
顔の前で両手を組み、二人を交互に見遣る。
「最近目に見えて平和だったろ?少し前に千鶴を襲った事件と警察官二人の負傷事件、そしてお前らが立ち会った若者ナイフ事件以外に、ここ最近影の暴走による事件は起きていない…と思っていた」
「思っていた?」
楓の言葉に憂里が敏感に反応した。
実際に張り込みをしていた間、憂里の目にも千鶴の目にもあの若者を覗いて暴走させるほど"影"を纏った人間はいなかった。
それからも特に事件が起こったという報告もなかったはずだ。
どういうことだ、と憂里は楓を問い詰める。
一瞬間を置いて、淹れ直したコーヒーを啜り、それから楓は言った。
「俺が考えたのは、"影"による事件が起きていないんじゃ無くて、実際は起きていた、ということだ」
「は…?」
憂里は眉間に皺を寄せて、訝しげに楓を見た。隣に座る千鶴は黙ってその話を聞いている。
「いや、"起きていた"というより、"既に退治済みだった"って言った方がいいか」
「どういう…」
理解できない、と言った風に首を傾げる憂里に、楓は続けて説明する。
「実際は"影"は増幅し続けていた。けれどそれは自我を飲み込み人を襲うまでには至らなかった。だから俺たちは気づかなかった」
「どうして、」
「どうして人を襲うに至らなかったか?そんなの決まってる。さっきも言ったように、既に"誰か"が退治していたから」
「誰が…」
誰が。
憂里の最もな問いに、楓は口を開く。
「それを真崎に調査しに行ってもらってた。内容は、本部から人員が駆り出されているかどうか、そしてその管轄区域の調査だ。これは調べてわかったことだが、最初の千鶴が襲われた事件、そして警官負傷事件によって、これから先のこと懸念した本部がこっちに人員を派遣したらしいんだがーー…それが」
「♪~」
これから一番大事なことを言おうとしていた楓の言葉は遮られた。
それは突然の電子音だった。
次も続けて更新です。…多分。




