第二夜③ 新たな仲間
刀を携え夢の世界で戦っていたのは自分だった。
夢の中での記憶が、恋によってよみがえらされた悠里。
記憶を共有し始めた、戦う者たちは今日も夢の中に来ていた。が・・・
今回も新たに仲間が登場してきます。
「この線からこちらへは近づくな」
ユーリは手にした刀で地面に線を引いた。
その反対側には涙目のレン。
さらに後方には昼間出逢ったばかりのユウジとレイトが居た。
夢の中の、どこかの公園らしきところに来ている。
「夢と現が繋がるというのはこういうことか」
おかしそうに言い放ったのはレイト。
昼間とは違い制服のシャツをまくり、広く襟を開け、ブレザーを肩にかけていた。
そして腰には太いベルトを巻きそこには斧のような武器を挿している。
昼間の大人しい雰囲気はなく、まるで別人のようだ。
ユウジは変わった様子は無いがブレザーを腰に巻き、手には弓を携えている。
「あの光景が夢の中だったら、お前の命は無い」
ユーリは目を吊り上げて刀の切っ先をレンの顔面に向けた。
「だから、苦しめるために連れて行ったんじゃない!レイト先輩が変な事を言うから!」
「お前っ、いま俺のせいにしたな…」
「えっ」
「よしっ、ユーリ。こいつを刺せ!俺は真っ二つにしてやる」
「任せろ」
「待てって~…まじ?!」
ユーリが刀を、レイトが大きな斧をレンに向ける。
「そこまでですかね」
にこやかに傍観していたユウジが、静かに話を遮った。
全員がユウジの視線の先を見る。
「来やがったか」
レイトが言うと同時にユーリは柄を握り直し、レンは長太刀を構えた。
小さな黒い球体が二つ、宙に浮かび飛び回っている。
「2体とは珍しいな」
その球体は四人の前で回転を始め、いつの間にか巨大な影となった。
「こいつらは何なんだ」
慌てた様子もなくユーリがユウジに聞く。
「そんなことも知らずに戦っていたのですか。あの妖はいわゆる悪夢の形…」
「悪夢?」
「我々はナイトメアと戦っているのです。人々を苦しめるナイトメアを排除するために剣を振っているのです」
「ナイトメア…」
悠長に話をしている時間を与えず、黒い影が生み出した小さなナイフのようなものが無数に飛んでくる。
二人は左右に別れ、間一髪避けた。
「まずはこいつらを倒してからか」
ユーリは二つの影に向き直り刀を振り上げる。
「もう始まったんだ」
ユーリの後方から聞いたことの無い声が聞こえた。
振り返る余裕は無い。
刀の柄をしっかり握り、ナイフの雨をかわしながら一気に飛び掛り一撃を浴びせた。
これで終わるはずだった。
しかし、瞬時に影は揺らめき裂け目は修復された。
「おかしい」
いつの間にかユーリの隣に居たレンが呟く。
もう一体のほうを見ると同じ光景が目に入る。
ユウジの放った矢が貫通したずの穴は塞がり、レイトの重たい攻撃もまるで水を切るように揺らめいて終わった。
「なんで切れないんだ?俺たちの力が弱まったのか?」
「違う!こいつら進化してやがる」
影の攻撃をかわしながらレイトが言う。
「ねぇ!そろそろ無視するのやめてもらえる!?」
先ほどの声の主がレンの腕を掴む。
「よう!『タイガ』、遅かったんじゃないの?」
レンは意地悪な笑顔をタイガと呼んだ少年に向けた。
「あんなやつ、刻んじゃえば良いんだろっ!」
そういいながら、タイガは皆の目の前から消え、影に飛びかかる。
手に持っている二本の短剣を煌かせた。
たくさんの光の筋が流星群のように流れる。
そして、影は繋がる間もなく消えた。
「そういうことでしたら」
もう一つ女の子のしおらしい声がユーリの脇を風のように通り過ぎると体が確認できないほどの大きなハンマーが宙に浮き、影の頭上に到達すると、ものすごい衝撃と共に地面に接地する。
挟まれた影はタイガの倒したそれと同様にあっという間に存在が消えた。
その二つの影の跡には二人の影が残る。
「タイガ、やるなぁ」
レンが駆け寄るとタイガが振り返る。
金色のふんわりとした髪に大きい瞳。
その嬉しそうな笑顔はまるで少年のようだった。
「シオン」
こちらも少女のような見た目とは結び付かない、重量感のあるハンマーを軽々と持っている。
おかっぱ頭に大きなリボンがシオンと呼ばれた少女のかわいらしさを引き立たせていた。
「お役に立てましたでしょうか」
きれいな心が現れたような顔でにっこりと微笑む。
ユーリはシオンを見つめ、シオンもまたユーリを見つめた。
「君は…」
昼間の教室での光景が頭をよぎる。
レンに飛びついてきた長い髪の少女。
「確か、越谷…」
その先を告げようとすると、シオンはユーリの口に人差し指を当てた。
「私はここではシオン。それだけです。あなたがユーリさん?」
微笑を崩さずシオンが訊ねる。
「ああ」
「噂通りの方ですね。お会いできて光栄です」
ゆっくりとお辞儀をするその姿は昼間の姿とは全く重ならない。
「なんでこんなに違うんだ」
ユーリは記憶が繋がってからずっと疑問に思っていたことを口にした。
夢と現での性格にギャップがありすぎる。
記憶が甦ったからこそ余計に違和感があったのだ。
それにはタイガが簡単に答える。
「夢だからだよ」
「夢の中だから戦えるんだろ?」
レンも続いて答えた。
「だがなぜ違うんだ。性質までも」
そう言ってレンの目元を指差す。
この夢幻世界ではレンは眼鏡を掛けていなかった。
「確かに…」
「あら、この方がステキですわ」
シオンがレンの顔を覗きながら言った。
「そうかな」
レンが顔を赤くして頭をかく。
「本質…だと思いますよ」
話を元に戻したのはユウジだった。
「本質…」
「夢の世界は現の記憶から形成されるものです。この公園も、我々が初めて会った学校も現実世界にあるものです。ただ違うのは、ここでの自意識とは深層心理、物事の本質からきているのではないのかと」
「ここでの俺たちこそが本当の姿って事か」
レイトが斧をベルトに装着しながら納得したように呟いた。
「さあ、どうでしょうか。ですが、偽りの無い姿であるとは思いますが…」
ユウジはにっこりと微笑み、話を続ける。
「我々の強さは夢幻に縁るもの。夢幻が崩壊し夢と現が繋がると…先ほどの続きになりますが、ナイトメアの現実への放出を許すこととなります。だからこそ我々は戦わなければならない。夢幻に選ばれた人間はその強い芯の部分で創られている」
ユーリは非現実的な話を漏らすことなく聴こうと、真剣なまなざしでユウジを見ていた。
「では、ここで死んだら?」
「いまはまだ夢は夢です。ですが極端な話、二つの世界が繋がったら夢での死は現実での死を意味することになるでしょうね…」
確証はない。
解っていても、ユウジの説得力のある話にその場が静まり返る。
「あくまで僕の憶測での話ですよ」
ユウジは笑いながらそう続けたが、誰も反論するものは無い。
皆、薄々勘付いていた話だった。
「願えば叶う。この夢の世界では俺たちは負けないさ」
レンが声を大きくして強く言う。
「あいつらが進化したなら俺たちだって望めば強くなるはずだしな」
「この夢の世界ではって何かなあ…そう言えばレンは現実ではユーリにパンチ食らってKOだったな」
「レイト先輩っ!!」
レイトがレンを嘲るとタイガとシオンが目を丸くして、ユーリを見た。
「現のユーリさんはそんなにお強いんですか」
「は?」
「あのパンチなら、現実でもナイトメアをやっつけられるんじゃないか?」
レンの悪戯な一言を聞いた、その瞬間ユーリが拳を握る。
「よし、夢と現がいまどれだけ繋がっているか試してみよう」
そして、ユーリは力を込めた拳を振り上げた。
お読みいただきありがとうございました!
新たな仲間としてタイガ・シオンが加わりました。
そして、戦っている相手の正体がなんとなくわかって目的も何となくわかってきました。次回も新しい仲間が登場してきます。
次回更新をお待ちください!!




