表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

敵討ち鍵屋の辻

落語風解説(落ちなし)

敵討ち鍵屋の辻

           



熊さんや、なんだい、聞きてえことってえのは?


ご隠居、実はあの斬り合いのことよ。


ええ?斬り合いかい?さむれえの話を聞きたいってえのかい?どの斬り合いのことさ。


あの荒木又右衛門の三十六人斬りよ。鍵屋の辻でのさ。


ほう、それで何を知りてえんでえ?


そのきっかけよ。仇討ちと聞いてるが、誰の仇討ちなんだい?


鍵屋の辻ってえのは、備前、岡山藩士の渡辺数馬が姉婿の荒木又右衛門らの助太刀を得て、出奔した河合又五郎等を寛永十一年に斬った、っていうのがその場所じゃ。

河合は数馬の弟源太夫を私情で殺したっていうのがその発端じゃ。


ご隠居、そこさ。


なに?


その私情ってのはなんだい?


ありゃ、お前知らんのか?


その源太夫ってのはけんかっ早かったのかい?


その反対だい。


えっ?じゃ何で殺されたんだい?


お前も常識を知らねえな。それでも江戸っ子かい。遊べよ、もっと。


えー?


源太夫はその時の岡山藩主、池田忠雄ただかつの寵童だったのさ。河合はそれに横恋慕さ。


す、すると、あの武家の華っちゅう・・・?


そうよ、衆道よ。


でもねえ、ご隠居。いくら美童でもそんな女みたいにかわいがりたがるかね?陰間茶屋に俺様だって行ったことはあるが、いざその段になると、とってもその気にゃなれなかったね。そりゃ、ホントの好きもんだぜ。


武家の衆道はそれだけじゃないんだよ。


な、なにが違うんでい?


小姓になるのこはそりゃ、頭脳明晰、見苦しいところはないよう常に気を使ってるんだ。見られてうつくしゅう、そしてあるじには命を捨てて尽くす。契りをかわすときは「兄弟きょうでえ」になるっていうのさ。やくざと同じ言葉よ。どちらも命を掛けた契りよ。


へー、そんなをとうとが欲しいや。俺も。


河合は源太夫に冷たくあしらわれたのだろうな。それで河合は逆上したか、己のものにするために斬った。


ふーん、なにやらわけありだな。


仇討ちになるぐらいだから、尋常な勝負じゃねえな。それに殿様の威光も掛かってるが、河合を匿った旗本の意地ってのもあったんだ。

ここらへんは今西鶴と豪語している泊瀬とかいう物書きに書かせると面白いんじゃねえの?


俺ゃ、けっこう好きだね。そういうの。


日本人はこの手の話には寛大だって言われてるんじゃ。芸能人にもけっこういるだろ?


よし、これからその泊瀬っていう三文文士をとっちめて早く書かしてやるぜえ!


お、おう、待ちな!熊!・・・しょうがねえ奴だな、いっちまいやがった。まあ、潮五郎の「戦国風流武士」も司馬遼の「前髪の惣三郎」(「新撰組血風禄」に集録。映画「御法度」の原作の一編)もここらへんの描き方はいまいちだったからなあ。

西鶴はそこらへんはよく心得て今ではもうわからねえ話を「武道伝来記」に仕組んだんだが・・その泊瀬っていう物書きはどうかねえ・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ