9ー9 勝敗
9ー9 勝敗
ユニコーンとヘラジカは、お互いの角を突き合わせながら激しく空気を軋ませ押し合っている。
パッと見たところユニコーンが優勢に見える。
「叔父さん!」
あたしは、『西の魔女』が展開した防御魔法の傘の下から叔父さんたちを目で追い続けていた。
一瞬。
ヘラジカと目が合って。
その赤い瞳がぎらりと禍々しく輝いた。
ヘラジカがユニコーンを角で巻き上げて弾き飛ばす。
『女王!』
隙をついてアイゼルがあたしに向かって何百もの氷の刃を飛ばす。
『西の魔女』が両手を掲げて障壁を維持しようとするが氷の刃は、彼女の防御障壁を突き破ろうと迫る。
ぱきん、と乾いた音が響き、『西の魔女』の張っていた防御障壁が破壊された。
氷の刃があたしたちの方へと降り注ぐ。
もう、だめっ!
あたしは、ぎゅっと体を固くした。
けど!
刃は、あたしたちを傷つけることはなかった。
こわごわ顔を上げるとあたしたちの目の前にユニコーンの姿があった。
氷の刃を全身で受け止めて傷つき血を流している!
「叔父さん!」
『『西の魔女』よ!チカを!女王を頼む!』
叔父さんの言葉に『西の魔女』がこくりと頷く。
『西の魔女』があたしの手を掴むのをあたしは、払い除けた。
「叔父さん!」
ユニコーンは、ふらりと立ち上がるとヘラジカに対峙する。
このままじゃ、叔父さんが!
あたしは、さっきメイアから受け取った玉を思い出した。
あの玉!
まだ、メイアが持っている筈!
「メイア!!」
あたしは、できる限りの声で叫んだ。
緑の繭を飛び越えて銀色のフェンリルがこちらへと飛んでくる姿が見えた。
フェンリルの加勢にアイゼルは、一瞬、怯む。
その隙にあたしは、メイアに向かって叫ぶ。
「メイア!玉を!」
フェンリルが地響くような咆哮を上げる。
メイアの体から白い光が矢のようにこちらに飛んでくるのが見える。
それは、玉を咥えたダルメスだった。
あたしは、ダルメスから玉を受け取るとそれをユニコーンの方へと掲げた。
「戻れ!玉よ!」
目が開けていられないような眩い虹色の光を発して玉がユニコーンの額めがけて飛翔し、そのままユニコーンの中へと吸い込まれるように消えていく。
ユニコーンが地を踏み鳴らした。
全身が金色に輝き、角が鋭く伸びるのが見える。
槍の穂先のように伸びたユニコーンの角がヘラジカの体を貫いた。
ヘラジカが断末魔の声を上げ、動かなくなる。
辺りが静寂に包まれて。
「・・終わったの?」
あたしは、震える足でなんとかその場に立ってユニコーンの方を見た。
ユニコーンは、金色の霧のようなものに包まれたかと思うとだんだんと人の形に変化する。
そこには、傷ついてボロボロになった叔父さんの姿があった。
「叔父さん!」
あたしが駆け寄ると叔父さんは、あたしを抱き締めた。
「チカ・・もう、離さない。僕の女王」
叔父さんの背後でからん、と何かが崩れるような音がきこえてあたしたちは、そちらへと振り向いた。
そこには、崩れ落ちて身動きもできなくなったヘラジカの姿があった。
「アイゼル様!」
あちこちから血を流してぼろぼろの姿になっているクルセイラがヘラジカにすがり付く。




