9ー7 緑の繭
9ー7 緑の繭
あたしは、風に乗り天高く舞い上がっていく紙飛行機を見送るとぐっと拳を握りしめる。
これでいい!
手紙は、必ず叔父さんのもとへと届く。
そうすればきっと叔父さんは助けに来てくれる。
それまでにあたしがすべきことは。
あたしは、メイアたちが玉の在処を探し出すまでこちらにみんなの視線を集めておかなくては。
ペンを取り出すとあたしは、空中にロープと書いた。
現れた丈夫そうな長いロープを部屋に置かれていた天蓋付きのベッドにくくりつけるとそれを窓から外に垂らした。
あたしは、幸いなことに動きやすいジャージ姿だし。
恐る恐るあたしは、ロープにつかまり窓の外に身を乗り出した。
2階からロープを伝って下に降りるとあたしは、庭を見回す。
庭は、緑色の木々が繁っているが花は少ない。
ちょっと寂しい?
あたしは、ペンを取り出すと『花』と書く。
一瞬で辺りには、色とりどりの花が咲き乱れる。
これだけではダメだし!
あたしは、ペンをしまうと両手を組祈る。
どうか。
精霊よ、あたしに力を貸してください!
咲き乱れる花から色々な色彩の光が飛び立つ。
小さな光たちは、あたしの周辺を飛び交い始めた。
あたしは、にっこりと微笑むとウィンディーネの名を呼んだ。
ふわりと緑の光に包まれた丸いふわふわの玉のような姿が現れた。
『女王・・呼んだ?』
あたしは、頷くとウィンディーネに手を伸ばす。
「お願いがあるの」
あたしの願いにウィンディーネは、答える。
『そぅれー!』
ウィンディーネの掛け声に合わせて庭の植物たちがざわざわと一斉に天に向かって伸び始める。
植物たちは、茎や鶴を伸ばして絡み合って城を取り囲んでいく。
「な、なんだ!?」
「これはっ!」
「庭が?」
城の人々の悲鳴が聞こえる。
あたしは、心の中でごめんね、と謝る。
庭の植物たちは、城を侵食していく。
あっという間に城は、緑の繭の中に包み込まれていく。
うん。
あたしは、繭に手を伸ばして触れてみる。
緑の繭は、柔らかく絡み合っていて、誰もここから逃れることはできない。
これでしばらく時間が稼げる筈。
叔父さんが来てくれるまでここから誰も逃さないようにあたしが頑張らなきゃ!
誰かが炎で繭を焼き外に出てこようとするのをあたしは、肩に乗っているウィンディーネに命じて絡めとる。
身動きを封じられて悲鳴を上げている人を繭が飲み込み再び中に閉じ込めた。
ここからは、誰1人逃さない!
大地が震えて。
魔素が足りなくて大地が悲鳴を上げている?
あたしは、跪いて大地に触れる。
お願い!
もうしばらく力を貸して!
あたしの体がぽぅっと金色の光を発して。
その光が拡がって大地を、空を満たしていく。
『女王の魔素だぁっ!』
ウィンディーネが嬉しそうに空中で跳ねる。
『女王の魔素、おいしー!』
どんどん城を包む繭が巨大化していく。
空を覆い隠すほどに成長した繭の側に立っているあたしのもとに声が聞こえた。
「チカ様!」
「メイア?」
あたしは、メイアを感じとると彼女が通れるぐらいの空間の穴を繭に開けてやる。
繭の中からメイアがダルメスと共に這い出てくる。
メイアたちが出るとすぐに繭は閉じていく。
「玉は?」
あたしが聞くとメイアがにっこりと微笑んで虹色に輝く玉を懐から取り出した。




