8ー7 時間
8ー7 時間
あたしは、早くミルカリアの街にある叔父さんの家に帰りたかった。
でも、ルードレール伯爵の件でしばらくカリスプールの街に足止めされることとなった。
このラフニノフ王国は、2人の騎士と2人の魔女によって守られている。
ルードレール伯爵は、その2人の騎士の内の1人だった。
国を守護する一角が壊されたのだ。
王国の騎士団から派遣された騎士たちがこの件を調査するためにやってきた。
もともとみながルードレール伯爵の人柄には反感を抱いていたのだが、王国の柱である彼を処罰することができずにいたのだとか。
騎士としての彼は、あまりにも強大な力を持っていたため、誰も彼に逆らおうとはしなかったのだ。
そういったこともあるせいか、あたしが特に罰されることはなかった。
それどころかルードレール伯爵の犠牲になるところだった被害者として扱われた。
それでもあたしは、ショックからなかなか立ち直れそうになかった。
取り調べの間、あたしとメイアは、叔父さんが手配してくれた宿屋の部屋で過ごしていた。
別に外出を禁じられていたわけではなかったけど、あたしは、外にでることもなく部屋にこもって過ごしていた。
騎士団の騎士たちの相手は、叔父さんと『西の魔女』たちがしてくれたのであたしは、何もすることがない。
ずっと部屋で1人過ごしているあたしを心配してメイアは、なんとかあたしを散歩に連れ出そうとしてくれたけどあたしは、とてもそんな気分にはなれなくて。
ルードレール伯爵の城からは、あたしたち以外にも数人の少女たちが救出されたらしい。
あたしと同じ宿に部屋をとっている『西の魔女』とミランダ先生も何かとあたしに気を使ってくれたけれど、あたしは、すっかり心を閉じていた。
彼女らが来てくれてもベッドに潜って顔も出そうとしないあたしに『西の魔女』が話しかけてくれた。
「本来ならルードレール伯爵を排除するのは、私たちであるべきだったかもしれない。それでもあなたを行かせたのはあなたに知ってほしかったから」
『西の魔女』は、優しく語り続けた。
「あなたの叔父さんが恐れていることが何なのかを」
叔父さんは、かつてお父さんを殺された時みたいにあたしを失うときがくることを恐れているのだ。
でも。
叔父さんは、この世界に戻ってきて公爵家を再興してもルードレール伯爵に復讐することはできなかった。
それは、彼が王国に守られていたから。
そして、何よりあたしを守るために復讐を諦めていたのだ。
人としてこのラフニノフ王国で生きていくなら王家にも国の4つの柱たちにも逆らうことはできない。
なのに、あたしが叔父さんの知らないところでルードレール伯爵を倒してしまった。
叔父さんが困惑していることは、あたしにもよくわかっていた。
「少しだけ、待つ必要があるわ」
『西の魔女』は、心にゆっくりと染みてくるような声であたしに話す。
「あなたにも、叔父さんにも時間が必要なのだわ」




