8ー4 ルードレール伯爵
8ー4 ルードレール伯爵
カリスプールの街は、周囲を巨大な壁に囲まれた城塞都市だ。
『西の魔女』の使者であるあたしたちは、すぐに門を通され街の中心にあるカリスプールの城に向かった。
城に着くとあたしたちを街を治める領主であるローディアル・ルードレール伯爵が出迎えてくれた。
「遠い所をわざわざご苦労でしたな、ジークナー公爵令嬢」
ルードレール伯爵は、背が高い、長い顎髭を生やした老人だった。
伯爵は、とてもご機嫌な様子だった。
だが、青い瞳が油断なくあたしのことを試しているのがわかる。
「ところでジークナー公爵令嬢」
ルードレール伯爵は、あたしが手渡した『西の魔女』からの親書を見せながらあたしに問いかけた。
「この『西の魔女』殿からの手紙によるとあなたは、『幻獣の女王』に連なる者だとか。まことですか?」
「それは・・」
あたしは、いい淀んだ。
メイアをちらりとうかがうと彼女は、迷いのない表情でこくりと頷いた。
「あたしは、確かに『幻獣の女王』と呼ばれています」
「それでは!」
ルードレール伯爵が身を乗り出す。
「いよいよ世界樹の再生のために動かれるおつもりですかな?」
世界樹の再生?
あたしは、よく理解できなくて首を傾げた。
そんなあたしの様子を見てルードレール伯爵は、すぅっと目を細める。
「そうですか。まだ世界樹の在りかは思い出されてはいないのですね」
思い出す?
あたしは、ますます意味がわからない。
ルードレール伯爵は、口許を緩ませる。
「いや、失敬!てっきりあなたは、すでに世界樹の場所を思い出されているものとばかり思っておりました」
「えっ?」
呆気にとられているあたしにルードレール伯爵は、にぃっと獰猛な笑顔を浮かべる。
「なんでもあなたの叔父上であるジークナー公爵が王都でいろいろと画策しておられるとかお聞きしましたのでね。もしや、すでに世界樹の場所が掴めているのかと思ったのですが。存外公爵は、用心深い性質なようだ」
「なぜ、叔父が用心深い、と思われるのです?」
あたしの問いにルードレール伯爵は、笑みを深める。
「それは・・あなたのことを公表する前からあの方は、あなたを守るために動いておられるからです」
ルードレール伯爵が立ち上がりテーブルを避けてあたしの方へと歩み寄ってくるのを見てメイアが身構える。
「ほう・・」
ルードレール伯爵は、愉快そうに口角を上げた。
「すでに『幻獣の器』がお側に仕えているのですね。しかし、私のもとを訪れるのに1人しか『幻獣の器』を伴わないとはあなたは、見かけによらず豪気な方なのか?」
ルードレール伯爵があたしの顎に手をかけようとしたのを見てメイアが飛びかかる。
だが。
ルードレール伯爵は、メイアを片手で払った。
その衝撃でメイアが壁に激突する。
壁に亀裂が入り、メイアが呻き声を漏らして床に崩れ落ちた。




