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8ー1 共にありたい。

 8ー1 共にありたい。


 冬は、社交の季節だ。

 叔父さんは、ジークナー公爵として社交に励むために王都で過ごしていた。

 しかし、あたしは、学園での勉強に励むためにミルカリアの街に残された。

 あたしは、叔父さんがいない日々を送ることが寂しくて、悲しくて。

 叔父さんに王都には行かないで欲しかった。

 だから。

 叔父さんが王都に向かう前日にあたしは、叔父さんの執務室を訪れた。

 叔父さんは、あたしを快く迎え入れてくれたけど、なんだかよそよそしくて。

 それは、たぶん、あたしがグリノア王太子殿下、つまりグリエ君と婚約したせいだった。

 「どうしたんだ?チカ」

 叔父さんは、あたしを側へと呼び寄せた。

 椅子に座っている叔父さんの側に歩みよったあたしの頭を叔父さんは、優しく撫でる。

 「何か用事かい?」

 「なぜ?」

 あたしの声は、硬い。

 「今まで社交なんてしてなかったのに、なんで急に社交?」

 「チカ・・これでも僕は、公爵なんだ」

 叔父さんがあたしを見上げる。

 「今までは、社交も必要なかったけど、チカが来たからね。少しは、社交に力を入れないと。何より、チカは、現王太子の婚約者だし」

 あたしは、頭を振った。

 でも。

 言葉が出ない。

 あたしは、ほんとは、叔父さんに王都に行って欲しくない。

 それがあたしのためだとしても。

 あたしの側にいて欲しかった。

 あたしは。

 何も言えずにただ、涙を流していた。

 叔父さんのあたしを思いやる気持ちはわかっていたけど、それでも。

 あたしは、叔父さんに側にいてもらうほうが百倍もよかった。

 「泣かないで、チカ」

 叔父さんは、あたしの涙を指先で拭うと拳を握りしめる。

 「くそっ!僕は、何をしているんだ?」

 叔父さんがあたしから視線をそらした。

 「信じてくれ、チカ。僕は、お前を泣かせたくなんてない。ただ」

 叔父さんは、あたしから顔をそらせたままで噛み締めるように呟いた。

 「お前を守りたいだけなんだ」

 「あたしは・・」

 あたしは、震える声で告げた。

 「叔父さんに側にいて欲しい」

 「チカ・・」

 叔父さんが何かを恐れているように戸惑うようにそっとあたしの頬に手を伸ばす。

 冷たい指先があたしの頬を伝う涙を拭いとる。

 叔父さんは。

 自分の手のひらを眺めながら囁いた。

 「いつだって」

 叔父さんは、怯えている子供みたいに見えて。

 あたしは、思わず叔父さんを抱き締めたくなる。

 叔父さんは、込み上げてくるものを堪えるように目を閉じた。

 「いつだって大切なものは、僕の手の中から溢れ落ちていく・・」

 肩を震わせている叔父さんをあたしは、そっと抱き締めた。

 「大丈夫・・大丈夫だよ」

 あたしは、何度も繰り返した。

 叔父さんが納得するまで何度でも。

 あたしは、叔父さんを離さなかった。

 「あたしが叔父さんの側にずっといるから」

 叔父さんは、あたしのことをぎゅっと抱き締める。

 でも。

 すぐに叔父さんは、あたしを押し離した。

 そして。

 いつものように冷たく見えるほどに美しい微笑みを浮かべた。

 「ありがとう、チカ。だけど、お前は、もう、次期王の婚約者なんだよ?」

 それでも。

 あたしは、言葉を飲み込んだ。

 あたしは、叔父さんと共にありたい。

 

 

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