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7ー10 帰ってきたグリエ君

 7ー10 帰ってきたグリエ君


 新学期が始まる頃、『西の魔女』からの使いが来た。 

 なんでもグリノア王太子殿下の毒殺未遂事件の後日談だとか。

 『西の魔女』からの使者は、ミランダ先生だった。

 あたしも叔父さんと一緒にミランダ先生の話を聞くことになった。

 それによるとグリノア様とあたしに毒の入った果実水を渡した使用人は、すぐに捕らえられたんだとか。

 騎士団で取り調べをした結果、その人に毒を渡して飲み物に入れさせた人は、知らない人だったらしい。

 なんでも毒を入れなければ家族を殺すと脅されたんだとか。

 「でも、奇妙な話なの」

 ミランダ先生が腑に落ちない様子で話した。

 「その使用人は、天涯孤独で家族なんていなかったのに」

 騎士団の騎士たちがいくらその人に人質になっている家族がいないことを説明して聞かせてもその人は、納得しなかった。

 「間違いなく自分には家族がいてそれが人質になっている。そう、その使用人はいい続けたわ」

 最終的には、その使用人は、自害したのだという。

 騎士たちが目を離した隙に騎士団の詰め所の窓から飛び降りた。

 窓は、2階だったからその人は、怪我しただけだったんだけど、その後、意識が戻ることはなかった。

 「もしかしたら呪術師が呪いをかけていたのかもしれない」

 ミランダ先生は話した。

 「その使用人の死後、体を調べたら奇妙な紋様があったのよ」

 それは、ちょっとみアザにしか見えないらしい。

 けれど、『西の魔女』が言うにはそれは、呪術の贄に刻まれる刻印なんだって。

 「つまり、何者かがいもしない家族を人質にして毒を盛らせたということか?」

 叔父さんがきくとミランダ先生が肩をすくめてみせた。

 「そうみたいね。お婆様がいうには、精神干渉呪術によって精神を支配して操ったのだろうということよ」

 ミランダ先生の言葉に叔父さんが難しい顔をした。

 「それだけの呪術の使い手を相手にしなくてはならないということか・・」

 話がすむとミランダ先生は、すぐに『西の魔女』の城へと戻っていった。

 見送りをするあたしと叔父さんに不意に思い出したというようにミランダ先生が振り向いた。

 「そうだわ。グリノア王太子殿下のことなのだけど・・」

 ミランダ先生の言葉に叔父さんは、苦虫を噛み潰したような顔をした。

 あたしは、思わず顔が綻んでいた。

 嬉しくて!

 

 新年が開けてしばらくすると学園にグリエ君が戻ってきた。

 相変わらずの黒縁メガネの冴えない様子。

 これがこの国の王太子殿下だとは誰も思わないに違いない。

 「何者かがグリノア王太子殿下の命を狙っている」

 ミランダ先生が告げた。

 「身を守るためにグリノア王太子殿下は、しばらくこのミルカリアの街で暮らされることになったの」

 ミランダ先生がぱちん、とウィンクした。

 「よろしくね、チカ」

 あたしは、どうしたものかと思っていた。 

 グリエ君が戻ってくるのは嬉しい。

 でも。

 婚約者であるグリノア王太子殿下のお側にいることになるのはなんだか緊張するし!

 あたしがミランダ先生の話を思い出しているとグリエ君があたしたちの側の席に腰を下ろした。

 「また、みんなと学園に通えるとは思っていなかったけど」

 グリエ君がはにかむように微笑む。

 「戻ってこれてすごく嬉しいよ」

 

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