7ー7 力が欲しい!
7ー7 力が欲しい!
叔父さんと『西の魔女』は、見つめあった。
あたしは、叔父さんが今にも切れるんじゃないかと思って心配だった。
叔父さんは、いつもの紳士的な叔父さんではなかったから。
赤い瞳を炎のように燃え上がらせている叔父さんは、まるで『西の魔女』を頭から齧りつくそうとしている悪いドラゴンのように思えた。
あたしは、思わず叔父さんの上着の裾を掴んでいた。
「チカ・・」
「叔父さん」
あたしは、わざと眠そうな顔をすると目を擦る。
「あたし、もう、眠い。家に帰りたい」
「チカ」
叔父さんの顔つきが少し和らぐ。
「わかった。すぐに帰ろう」
あたしを連れてさっさと帰ろうとする叔父さんに『西の魔女』が苦笑する。
「わかっているでしょう?ジークナー公爵。その子は、あなたが思っているような幼い子供ではないのよ?」
「それでも」
叔父さんは、部屋の扉のところでちらっと『西の魔女』を振り向いた。
「守るし、守りたい。この子をこの世界の全てのものから守るのが私に与えられた任務だ」
「それがあなたの答えなのかしら?」
『西の魔女』がふっと笑みを浮かべた。
「あなた、意外と不器用なのね、ジークナー公爵」
あたしたちが城から出るとすでにランディーノが馬車を用意して待っていた。
どうやらミランダ先生が手配してくれていたようだ。
あたしは、叔父さんに手を引かれて馬車に乗り込んだ。
向かいあって腰を下ろすが、なんだか気まずくて。
今夜は、叔父さんも一緒だからメイアは、家でお留守番だし。
馬車の中の空気は、1秒ごとに重さを増していっている感じがして。
息が詰まってしまう。
叔父さんは、あたしの前に足を組んで座ったまま、ぼんやりと真っ暗な窓の外を見つめている。
遠くに『西の魔女』のお城が青くて丸い月を背負って空に浮かんでいるように見える。
月と城を背景にしてたたずむ叔父さんは、この世のものとは思えないほど美しかった。
あたしは、ほぅ、とため息を漏らした。
いったい『西の魔女』は、何を言おうとしてたんだろう?
首を傾げる。
叔父さんは、何からあたしを守ろうとしているの?
あたしは、叔父さんの気持ちが嬉しかった。
でも。
同時になんだか歯がゆい気持ちになる。
叔父さんにとっては、あたしは、まだまだ子供で。
いつだって守られてばかりの存在。
力が欲しい。
あたしは、初めて心の底からそう思っていた。
守られてばかりじゃなく。
叔父さんを守れるような力が欲しい。
翌日から、あたしは、剣の鍛練を始めた。
といっても模造剣で素振りしたり、基礎体力をつけるために庭を走ったりしてるんだけど。
それでも。
何かしないといられなかった。
庭で素振りをしていてふと視線を感じて。
屋敷の2階の叔父さんの部屋の方を見上げると叔父さんが窓辺に立っていてあたしを見つめているのがわかった。
叔父さんの赤い瞳が揺れるのがわかる。
「ちょっと打ち合ってみますか?チカ様」
あたしが鍛練しているのを横から見てくれていたメイアがそう言って自分の模造剣を用意して構える。
「お願いします!」
あたしは、メイアが構えている剣に向かって自分の剣を振り下ろした。
きぃん、と快い澄んだ音が早朝の空気を震わせる。




