7ー3 女神の祝福
7ー3 女神の祝福
あたしは、庭を片付けてから教会へと向かった。
今日は、診療所に手伝いに行く日だった。
あたしは、結局、ロードスさんの診療室付きの手伝いのままだった。
あたしが診療室に行くとマリカさんは、小さな鉢を抱えて目に涙を貯めていた。
「どうしたの?」
あたしが驚いて訊ねるとマリカさんがぽつぽつと話してくれた。
どうやら、今、教会では聖女候補生の試練を行っているようだ。
教会が奉っている世界神である女神ダミラの力が宿るという花の球根をマリカさんとエレノアさんの2人がそれぞれ育てて花が無事に咲いた方が女神に選ばれた聖女ということになるらしい。
「それが・・昨日までは順調に育ってた筈なのに今朝みたら・・」
マリカさんが抱えている鉢の花は、茎がぐったりとして枯れかけている。
「もし、聖女じゃないってことになればチカ様からお預かりしている『聖女の錫杖』をエレノアさんに引き渡せと言われてて・・」
あたしが項垂れているマリカさんを見つめて考えていると不意に目の前にぽわん、と緑の光が差して丸い玉のようなものが浮かび出た。
「ウィンディーネ?」
『チカさま・・困ってる?』
あたしは、ウィンディーネに鉢を見せてみた。
するとウィンディーネが鉢の回りをぐるぐると飛び回った。
すると!
たちまち枯れかけていた茎が蘇り、みるみる内に赤い大きな蕾が開き美しい花が咲き誇った。
「これは・・?」
辺りに花の甘い香りが漂い、その花の匂いを嗅いだ患者さんたちの病が次々と癒されていく。
「奇跡だ・・」
ロードスさんが感極まった様子で呟いた。
「何が奇跡ですって?」
突然、エレノアさんが診療室の中へと入ってくる。
背後からマリカさんの鉢と同じような鉢を捧げ持った従者が付き従っていた。
「ごらんなさいな、私の花は、もうすぐ花開きそうですのよ!これでどちらが女神の祝福を受けているかは明らかですわね!」
はいっ?
あたしたちは、目を瞬いていた。
「エレノア様!」
鉢を持った従者がマリカさんの持っている鉢の花に気がついて声を上げる。
エレノアさんの表情が赤から青へと変わっていく。
「なんですって?そんなことがある筈がないですわ!だって、あなたの花は・・」
言いかけてエレノアさんが口を閉じた。
「・・とにかく、こんなのいかさまですわ!私は認めませんからね!覚えてなさい!」
言いながら去っていくエレノアさんとその従者の姿を見てあたしたちは、思わず笑っていた。
マリカさんの花が咲いたことを聞いたロードスさんが神官長を呼びに行き、神官長が慌てて駆けつけてきた。
そして、マリカさんに女神の祝福が与えられたことが承認されマリカさんが正式に教会の認める聖女ということが証明された。
「おめでとう!マリカさん!」
あたしは、マリカさんを抱き締めて祝福した。
すると。
花がふるんと揺れて。
甘い香りが教会中に溢れ出した。
「聖女の祝いを!」
神官長が声を発した。
こうして女神ダミラの祭りでマリカさんが聖女として認められることが決まったのだった。




