7ー2 ウィンディーネ
7ー2 ウィンディーネ
秋になる頃、ミルカリアの街では、豊穣の女神ラーナスのための祭りが盛大に開かれる。
あたしにとっては、異世界に来て初めての収穫祭だ。
あたしは、収穫祭の朝、庭の一角に女神ラーナスを象徴する花、ラナンの球根を植えた。
ほんとは公爵家の令嬢が土いじりなんてしないらしいけど、あたしは、特別。
庭師のゲオ爺さんに頼んで使ってない花壇を分けてもらってついでにいろんな花の種を蒔いてみる。
もとの世界から持ってきたひまわりの種があったのでそれもついでに蒔くことにする。
小さなスコップで土を掘り返して種を植えていく。
そこにあたしの唯一使える魔法である生活魔法で水を出してかける。
「こうしとけば2、3日で芽が出るでしょう」
ゲオ爺さんが目を細める。
ところが、その翌日。
あたしが目覚めるとメイアが珍しく慌てた様子で寝室に入ってきた。
「チカ様!庭が!」
ええっ?
あたしは、起き抜けでまだ眠い目を擦りながら服を着替えるとメイアに引っ張られるようにして庭へと向かった。
庭は、まったく見違えていた。
一面の緑の蔦が繁っていて。
ところどころにカラフルな赤や黄色の花が咲いていた。
あれは・・ひまわり?
あたしの姿に気付いたゲオ爺が駆け寄ってくる。
「チカお嬢様!」
「これ・・いったいどうなってるの?」
「それが・・どういうことなんだか、わしにもわからんのです」
困惑しているゲオ爺。
「どうしたんだ?」
叔父さんも庭に出てくる。
あたしは、叔父さんから視線をそらした。
今は、まだ、気持ちが落ち着かなくて。
叔父さんを見ているだけで嬉しいような悲しいような気持ちになってくる。
「チカお嬢様が昨日、花の種を植えられたんですが・・今朝にはこんなになってまして」
ゲオ爺の説明に叔父さんがはっと目を見開く。
「あそこ!」
叔父さんが指差した先には、一際背が高い虹色のひまわりが咲いていて。
目を凝らすと拳大の緑の実がなっている?
あたしたちは、庭に繁った草木を払い除けながらそのひまわりの方へと近づいていった。
「ひまわりの実?」
叔父さんの問いにあたしは、頭を振った。
こんな実がなってるのなんて見たことがないし!
叔父さんが手を伸ばして実をもぐとそれをあたしに見せる。
ぱっかん、と実が割れて中から緑の小さな丸い毛むくじゃらの丸い玉みたいなものが飛び出してきた。
「これは・・ウィンディーネか?」
緑の玉みたいなふさふさのものは、ぽん、とあたしの頭の上に止まった。
その瞬間に辺りが光に包まれる。
『チカさま・・『幻獣の女王』さま・・』
ウィンディーネは、歌うようにあたしに呼び掛ける。
『これは、幻獣だな』
いつの間にかメイアの肩に乗っていたダルメスが告げた。
叔父さんがいうには、ウィンディーネは、緑を操る能力を持つ幻獣なのだとか。
ふさふさでなんか可愛いかも?




