6ー9 仲間
6ー9 仲間
あたしたちがダンジョンから戻って数日が過ぎた。
いつもと変わらない日常。
だが。
「グリエ君、どうしてるかなぁ」
アンナさんがぽつりと呟く。
「急に王都の方に帰っちゃうなんて。兄さんも残念がってたし」
あたしは、曖昧に頷いた。
あの日。
ダンジョンの深淵に落ちた時、あたしは、グリエ君の真実を知った。
このラフニノフ王国には、2人の王子がいる。
1人は、王の正妻である王妃の子である王太子ランディア・ラフニノフ殿下。
そして。
もう1人は、身分が低い側妃を母に持つ第2王子であるグリノア・ラフニノフ殿下、つまりグリエ君だった。
グリエ君は、王子でありながらほぼ臣下の子と同じ扱いを受けていた。
そして。
今回、ミルカリアにおいて起きている異変を調査するために送り込まれたのだ。
「僕は・・もう、君たちの友ではいられない」
ダンジョン最下層の神龍の里から脱出した後、グリエ君は、あたしにそう告げた。
だけど!
寂しげな背中にあたしは、叫んだ。
「グリエ君!」
グリエ君は、決して振り向くことはなかった。
それでもあたしは、叫び続けた。
「あたし!グリエ君があたしを助けようとして一緒に深淵に落ちたこと、忘れないから!」
あたしが暗闇に落ちていくのを掴まえようと手を伸ばしたグリエ君。
それが彼の真実だとあたしは信じている。
あたしは、アンナさんに微笑んだ。
「きっとグリエ君は帰ってくるよ。そんな予感がする」
ダンジョンから生還したあたしたちは、『西の魔女』の訪問を受けた。
「『神龍の里』を見つけられたとか」
『西の魔女』は、あたしたちに問いかけた。
「あなたは、剣と錫杖を手に入れたのですね?チカ」
あたしは、叔父さんを見た。
叔父さんは、あたしの変わりに答える。
「それを知ってどうするつもりだ?」
「剣も錫杖も使える者がいてこそ意味がある」
『西の魔女』が目を細める。
「そうは思わないかしら?チカ」
「でも、あたしは、あたしが信じる者にしか剣も錫杖も預けたくない!」
あたしは、そう『西の魔女』に告げた。
あたしの言葉に『西の魔女』は、少し驚いた表情を浮かべる。
「そう。あなたは、自分の仲間を見つけたのね」
『西の魔女』は、しばしの黙考の後、あたしと叔父さんに微笑んだ。
「いいでしょう。王家も教会もしばらくは私が押さえます。あなたは、その間に剣と錫杖を預けられる者を選びなさい」
あたしは、ずっと『西の魔女』の言葉の意味を考えていた。
彼女は、あたしがすでに剣と錫杖を預ける人を決めているようなことを言っていた。
でも。
剣は、ともかくとして聖女の錫杖はどうすればいいのか。
わかっていることは、決してあたしは、エレノアさんを聖女とは認めたくはないということだけ。
叔父さんは、ダンジョンから戻ってから正式に教会にエレノアさんのことを申し立てた。
けれど、教会側は、あたしの勘違いではないか、と応じてきたのだ。
教会側は、あくまでもエレノアさんを聖女とする立場を崩すつもりはないようだ。




