6ー7 死
6ー7 死
「『幻獣の女王』を殺したのが誰か、それは、我々にもわからぬ」
老婆が告げた。
「だが、それによって世界は、今まさに危機に瀕しておるのじゃ」
老婆があたしを真摯な眼差しで見つめ玉を差し出した。
「今、この世界にやっと『幻獣の女王』が戻ったのじゃ。今こそ『幻獣の王』を甦らせる時じゃ」
あたしは、老婆が差し出した玉を受け取ることができなかった。
だって!
あたしに『幻獣の王』を甦らせることができるなんて思えないし!
でも。
老婆は、そんなあたしを優しい眼差しで見つめる。
「恐れることはない。お前さんの中に確かに女王はおる。今はわからずともその時がくればお前さんもそれを受け入れることができるじゃろう」
あたしは、震える手を伸ばして老婆から玉を受け取ろうとした。
ごぅっと激しい爆音が聞こえて辺りが揺れる。
「な、なんじゃ?」
「婆様!」
村人が駆け込んでくる。
「化け物が降ってきた!」
「化け物が?」
あたしたちは、村の中央の広場へと向かった。
そこには、虹色に輝く角を持った白馬がたたずんでいた。
『チカ!チカはどこだ!?』
「叔父さん?」
あたしは、何がなんだかわからなくて。
はるか頭上を見上げると黒い穴が開いているし!
「ここは、いかなる魔法からも守られておる筈。それを全て破壊して来たというのか?」
ユニコーンは、前足で地面をかくと嘶いた。
『チカ!』
「叔父さん、あたしは、ここにおるよ!」
あたしは、叔父さんに向かって叫んだ。
『チカ!』
叔父さんがあたしを見つける。
あたしは、叔父さんの方へと近づくとそっと叔父さんに触れた。
滑らかな毛並みに触れると叔父さんは、ぶるっと首を振る。
『よかった・・お前が無事でほんとによかった!』
叔父さんがあたしの首もとに鼻先を擦り寄せる。
「もしや、お主は、王の半身か?」
老婆が叔父さんに跪いた。
「よくお戻りくださいました」
老婆が手にしていた玉を差し出す。
「どうぞ、玉を」
その時!
刃が老婆を貫いた。
口から血を吐きながら老婆が後ろを振り向くとそこには、白髪の若い男が立っていた。
燃えるような赤い瞳のその男は、老婆が持っていた玉を奪うとあたしをまっすぐに見つめる。
「『幻獣の女王』」
『動くな!』
叔父さんが皆に命じた。
『動けば死ぬ!』
白髪の男がにぃっと笑った。
「玉は、いただいていく」
「お前はっ・・!」
倒れながらも手を伸ばす老婆を見てその男は、嘲笑った。
「お前たちが守ってきた玉は、ありがたく我が王がいただく。感謝するがいい。お前たちを皆殺して手に入れることもできたのだ。それをせぬのは」
赤い瞳があたしを射るように見つめる。
「女王がそれを望まぬだろうから。ただそれだけだ」
男の姿はすぐに揺らめいて消えていった。
「いずれ再会できる日を楽しみにしておりますぞ、女王よ」
男の高らかな笑い声が響き渡る中、倒れて息絶えた老婆にすがり付いて村の若者の1人が声を上げる。
「婆様!」
村人たちは、次々に老婆にすがりついた。
低い鳴き声が村を包み込んでいく。




