6ー6 女王の死
6ー6 女王の死
とんでもなく苦いお茶をいただいたあたしたちにその老婆は、この神龍の里の由来を話し始めた。
「この村は、な。かつてこの世界と幻獣の国が境を接しておった頃よりあった村でな」
数千年も前のこと。
まだ人間と幻獣が分かたれていなかった頃。
世界は、まだ魔素に満ちていて『幻獣の王』もまだ眠りについてはいなかった。
その頃、『幻獣の王』の側に仕えていた幻獣の中にこの里を作った主様がいたのだという。
「主様は、王に忠実じゃった故に力を持ちすぎた王が自らを2つに分かった時にその片割れをお預かりし、この里でお育てすることになった」
王の半身は、美しい角持つ白馬の姿をしていた。
やがて、その半身が里を出る時、半身は、この神龍の里を守護するために己の力を込めて一つの玉を造った。
「それがこの玉じゃ」
老婆が懐からまばゆく輝く拳大の玉を取り出した。
金色に輝くその玉は、なんだか懐かしい匂いがして。
あたしは、胸が騒ぐのを感じていた。
これ、叔父さん?
叔父さんの匂いだ!
「いづれ、『幻獣の王』が目覚めたときに長い眠りによって衰えた王に力を注ぐために分かたれた半身じゃ。この力は、『幻獣の王』が目覚める時に戻される筈じゃった」
しかし。
『幻獣の王』が目覚めることはなかった。
「本来は、『幻獣の王』は、数百年後には目覚めることになっておった。じゃが・・王が目覚めることはなかった」
老婆があたしをじっと見つめる。
「『幻獣の女王』が眠りについた王を封印したからじゃ」
長い時を生き、この世界を滅ぼすこともできる力を持った『幻獣の王』は、番となる存在を望んだ。
「そうしてこの世に生まれたのが『幻獣の女王』じゃ」
王は、この世の全てを込めて作り出した女王を慈しんだ。
世界の何者よりも愛し、執着したという。
「なんで女王は、王を封印したの?」
あたしは、震える声で老婆に訊ねた。
「それは・・『幻獣の王』を守るためじゃ」
力を持ちすぎた『幻獣の王』は、世界の脅威となった。
人はもちろん、魔族、ひいては神々をも恐れる存在。
ただ、存在するだけで世界を滅ぼしかねない。
そうして世界は己を守るために『幻獣の王』を滅ぼそうと考えた。
「『幻獣の王』は、自らを封印することで世界を守ろうとしたのじゃ」
そのために自らの力を半分に分かち、愛する者の手により眠りについた。
「しかし!」
グリエ君が声を上げた。
「今や、王の不在が世界を滅ぼしかけているのでは?」
「うむ」
老婆が頷く。
「本当ならもっとはやくに王は、目覚めることになっておったのじゃ」
しかし。
何百年、何千年。
『幻獣の王』が目覚めることはなかった。
「それは、『幻獣の女王』が消えたからじゃ」
王の封印を解くことができるのは、『幻獣の女王』ただ1人。
だが。
王を封印した後、『幻獣の女王』は姿を消した。
「いや、正確に言えば殺されたのだと言われておる」
女王が殺された?
あたしは、胸がざわめいた。
いったい誰に?
誰が女王を殺したの?




