6ー5 神龍の里
6ー5 神龍の里
「いきなりどうしたの?」
グリエ君は、いつもと同じ用に少しおどおどしながら話す。
けど、メイアは、剣をひかない。
すると。
グリエ君がふぅっと吐息を漏らした。
「さすが『幻獣の女王』の騎士だけのことはあるな。まさか、こんなにはやく気付かれるとは」
ふっと雰囲気が変わったグリエ君にメイアの緊張が高まる。
グリエ君は、いつもかけているメガネを外した。
グリエ君のくすんだ藁のような金髪がきらきらと輝く豪奢な色に変化していく。
「貴様・・もしかして王族か?」
メイアが敵意むき出しでグリエ君を問い詰める。
グリエ君は、苦笑した。
「仮にも自国の王族にその態度・・不敬と言われても仕方ないのでは?」
「王族がなぜ、こんなところに入り込んでいる?」
メイアが短剣を握り直すとグリエ君を睨んだ。
「もしかしてチカ様に害意を持って近づいたのか?」
「そんなわけないだろう?」
グリエ君が口角を上げる。
「ただ・・そうだな。チカ嬢とお友だちになりたいと思っていただけなんだが・・」
「なぜ、王族がチカ様に近づく?」
メイアは、気を昂らせたままグリエ君から目を離さない。
グリエ君は、肩をすくめた。
「ほんとにそれだけなんだけど・・ダメかな?・・それより今は、そんなことしている場合じゃないんじゃないか?」
グリエ君の言葉にメイアがはっと周囲を見回す。
辺りは、何者かに囲まれているような気配があった。
メイアがちっと舌打ちする。
「今は、見逃してやる。ここから無事に戻れたら。その時は、必ず話をつけさせてもらう!」
周囲の木々が揺れて数人の人影が現れる。
みな、腰に布を巻いているだけの姿の男たちだった。
浅黒い肌には、うっすらと鱗が見える。
「お前たちは、何者か?」
男たちの間から背の曲がった小柄な老婆が進み出てくる。
「なんの目的でこの神龍の里に来た?」
神龍の里?
あたしがぱちぱちと瞬きしているのを見て、老婆がぴくっと片眉を上げる。
「お主ら・・なぜ、幻獣の匂いがするのじゃ?」
「控えよ!」
メイアが声を荒げた。
「この方をどなたと心得るか!」
荒ぶるメイアに男たちがざわめく。
「婆様、この娘・・」
「わかっておる!」
老婆があたしたちの方へと歩み寄ってくると跪いた。
「お待ちしておりました、『幻獣の女王』よ」
いっせいに老婆の背後にいた男たちがあたしたちにひれ伏した。
あたしは、ぎょっとしてメイアを見た。
メイアは、きん、と乾いた音をたてて短剣を鞘へと戻す。
老婆たちは、あたしたちを島の奥にある村へと案内した。
かなりな広さの平地にまばらに小屋が建っていて畑や草地が拡がっている。
あたしたちは、村を見下ろせる小高い丘の上にある小屋に通された。
そこは、どうやらあたしたちを迎えにきたお婆さんの家らしくて。
囲炉裏を囲んであたしとメイア、それにグリエ君はお婆さんと向き合って座る。
お婆さんがあたしたちにお茶をすすめた。
囲炉裏にかけられた鍋から柄杓で湯を汲み不格好な茶碗に注いであたしに差し出す。
あたしが受け取りお茶を一口飲むのを見てお婆さんが口許を綻ばせる。
「どうじゃ?里のお茶は」
「・・苦い・・」
あたしは、顔をしかめる。
お婆さんがからからと笑った。
「そうじゃろう?じゃが、冷えた体を温めるにはこれが1番良いのじゃ」




