6ー3 島
6ー3 島
グリエ君は、落下しながらもあたしの手を離そうとはしなかった。
あたしたちは、どんどん落ちていく。
しばらく落下は続いたけどまだ底にはつかない。
いったいどのぐらい落ち続けているの?
その時!
はるか彼方から白銀の光があたしたちを目指して飛来してくる。
銀色の狼。
メイアだ!
「メイア!」
落ちながらもあたしは、メイアの名を呼んだ。
メイアは、あたしたちを空中で受け止める。
あたしとグリエ君は、メイアの背にしがみついた。
メイアは、そのまま暗闇の中を落ちていく。
このままだとあたしたち全員ただではすまない!
なんとかしなくちゃ!
あたしは、風圧の中、必死にポケットの中のペンを取り出すと空中に文字を書いた。
『翼』
虹色の光があたしたちを包み込む。
純白の翼があたしたちの背に現れた。
「なんだ?これっ!」
「飛んで!」
あたしは、叫びながら翼をはためかせる。
メイアの巨大な翼が風をはらみ、落下していく速度が幾分緩やかになる。
あたしたちは、必死に羽ばたいた。
落ちる速度がじょじょに遅くなり、ゆっくりとあたしたちは、下へと降りていった。
と。
足元に光が見えた。
うっすらと輝く光に向かってあたしたちは、落ちていく。
突然、光に包まれる。
まばゆさに目を瞬く。
そこは、一面の水面が広がる世界。
ふっと背中の翼が消える。
勢いよく落ちてきたせいもあってあたしたちは、空中にとどまることができずに水面へと突っ込んだ。
苦しい!
あたしは、もがいた。
溺れる!
そう思った時、不意にメイアに咥え上げられて空中に放り上げられる。
水しぶきと共にあたしは、ぐっしょりと濡れたフェンリルの背中の上に投げ出された。
「チカ嬢!」
グリエ君が呼ぶ声が聴こえた。
「グリエ君?」
「よかった!無事で!」
あたしは、メイアの背中の上で起き上がると辺りを見回した。
あたしたちは、巨大な湖のような場所に浮いていた。
というかメイアが懸命に泳いでいる?
「ここ、どこ?」
あたしの問いにグリエ君が首を振った。
「わからない。かなり落下したから・・きっとこのダンジョンの最下層近くなんじゃないかな」
ダンジョンの最下層?
驚いているあたしにグリエ君が告げる。
「ともかく、どこか島を見つけよう!」
しかし、辺りは一面の水面が続き、どこにも島のようなものはない。
と。
メイアの下に黒い影が集まってくるのが見えた。
「まずい!魔物が集まってきたぞ!」
グリエ君の声にあたしは、ぎゅっとメイアにしがみつく。
「メイア!逃げて!」
いくつもの水柱が上がり、巨大な海竜たちが牙をむいてあたしたちに襲いかかってくる。
もう、ダメっ!
あたしがそう思った時!
「凍れ!」
グリエ君の低い声が聞こえた。
そして、海竜たちの咆哮が響く。
一瞬のうちに海竜たちの回りの水が凍りついていく。
グリエ君の氷魔法だ!
「今のうちに逃げよう!」
グリエ君が言うより速くメイアが泳ぐスピードを上げていく。
海竜たちは、なかなか氷から逃れられず、あたしたちを追ってはこなかった。
あたしがホッとしているとグリエ君が前方を指差した。
「あっちに島がある!」
グリエ君が指す方を見るとはるか彼方に島陰が見えた。




