6ー2 落ちる!
6ー2 落ちる!
しばらく進んでいくと暗闇から悲鳴が聞こえた。
グリエ君とメイアが駆け出す。
薄暗い通路の奥でエレノアさんたちの班が巨大な蜘蛛の魔物と戦っていた。
「アラクネだわ!」
アンナさんが声をあげた。
アンナさんが言うには、アラクネは、知性が高くて大人しい魔物で中には人間と共生しているものもいるんだとか。
それがなんでこんなに凶暴化してるの?
「水蜘蛛?」
グリエ君が叫んだ。
「しかも子供を持っている。子供を守ろうとして凶暴化してるんだ!」
グリエ君がメイアに声をかけた。
「僕が助けに行く!君は、ここを守って!アンナさんは、先生を呼びにいってくれ!」
メイアがこくりと頷き、アンナさんが走り出した。
マリカさんがあたしたちを守る障壁を強化する。
グリエ君が壁際に追い詰められているエレノアさんたちの前に飛び込むと水蜘蛛に向かって氷の刃で切りかかった。
「はやく!逃げるんだ!」
グリエ君がエレノアさんたちを逃がそうとするがみな、立ち上がることができない。
「エレノアさん!こっち!はやく!」
あたしは、大きな声で呼び掛けた。
一瞬、エレノアさんの目の色が変わる。
エレノアさんが立ち上がるとあたしの方へと駆け寄ってくる。
すごい形相のエレノアさんにあたしがちょっと驚いていたら次の瞬間、エレノアさんに頬を打たれていた。
「何よ!いい気になって!」
エレノアさんがあたしに泣きながら怒鳴ってくる。
「聖女になるのは、わたしって決まってるのに!あんたなんて!」
その時、何かが壁に打ち付けられるような音がした。
「グリエ君!」
マリカさんが悲鳴をあげる。
グリエ君が!
水蜘蛛に捕まって壁にネバネバの糸で貼り付けられている!
どうにかしないと!
あたしは、ペンを取り出すと空中に『ハンマー』と書くとそれを思いっきり水蜘蛛に向かって押し出した。
空中に現れた巨大なハンマーが水蜘蛛を岩壁に叩きつける。
ごおぉん、という轟音が辺りに響いてダンジョンの壁の一部が吹き飛んだ。
というか。
ダンジョンに穴があいてる?
あたしは、壁に近づいて奥を覗き込んだ。
暗くてよく見えないがそこには深い穴があいていて底から冷たい風が吹き付けていた。
メイアがグリエ君を助け出し、マリカさんが蜘蛛の毒を消すために治癒魔法を施す。
あたしもグリエ君に駆け寄ろうとしたとき、不意に誰かがあたしを突き飛ばした。
エレノアさん?
冷たいエレノアさんの青い瞳が輝くのが見えた。
あたしは。
暗く開いたダンジョンの穴に落ちていくのがわかった。
まずい!
あたしは、腕を伸ばして何かに掴まろうとした。
と。
誰かがあたしの手を掴んだ!
「チカ!」
グリエ君?
でも。
グリエ君では、落下していくあたしを支えきれなくて!
あたしたちは、2人とも穴の中に落ちてしまった。
誰か!
あたしは、目を閉じて願った。
誰か、助けて!
叔父さん!
あたしたちの体は、落下していく速度を上げて落ちていく。
耳元で風が渦巻く。
あたしは、ぎゅっと目を閉じたまま深い深いダンジョンの奥へと落ちていった。




