5ー11 街道の女神
5ー11 街道の女神
久しぶりに登校するとアンナさんとグリエ君があたしたちを迎えてくれた。
「大丈夫?チカ」
「大丈夫だよ!」
あたしは、いつもの教室の席につくとにっこりと笑った。
「ちょっと叔父さんが風邪をひいちゃって」
「叔父さんが?」
アンナさんが訳知り顔で頷く。
「そうなんだ。家族は大切にしないとね」
「それより、聞いた?」
グリエ君があたしを探るような目で見つめる。
「『街道の女神』の話」
「『街道の女神』?」
あたしは、嫌な予感がしていた。
アンナさんがあたしの方へと身を乗り出す。
「そう!この前、街道に魔物が出現してすごい騒ぎになったんだけど、ね」
「そうなんだ」
あたしは、ちらっとマリカさんを見るがマリカさんは、そっと視線をそらした。
アンナさんが話を続ける。
「たくさんの怪我人がでたんだけど死者は、1人もでなかったの。実は、診療所の治癒師たちが駆けつけてみんなの治療をしてくれたんだって!」
「それが、ここだけの話なんだけどこの学園の生徒らしくって」
グリエ君が興奮した様子で話す。
あたしは、悪い予感がしていた。
バレてたらどうしよう?
「なんでも特別クラスにいるエレノア・ガストール男爵令嬢が大活躍したんだとか」
アンナさんがふん、と鼻を鳴らす。
「エレノア嬢のことは知ってるけど、いけすかない人なのよ?それが聖女とか褒め称えられててムカつくわ!」
「エレノアさんが?」
あたしは、マリカさんのことを見た。
マリカさんは、申し訳なさげに視線をそらしたままだ。
どういうこと?
なんでエレノアさんが聖女ってことになってるの?
というか、エレノアさんは、あの場にはいなかったのに?
あたしが瞬きしているのを見てメイアが告げた。
「教会のやりそうなことです」
確かにエレノアさんは、教会の聖女候補生だったけど、あの場にいもしなかったのに?
あたしは、なんだか腹が立っていた。
でもあたしのことがバレるよりかはずっとましかもしれない、と思い直す。
「そんなことより」
アンナさんが満面の笑みを浮かべる。
「あたしたちのジャージが完成したのよ!」
アンナさんが言うには、今度のデューラ・ダンジョン演習に間に合うようにとヨゼフさんとグリエ君が頑張ったらしい。
「兄さんがダンジョン探索にも通用する丈夫で軽い、動きやすい新しい服ってことで売り出したいんだって」
そうなの?
どうやらヨゼフさんは、あたしたちをジャージの広告塔にするつもりみたい。
つまりあたしたちの班が全員、ジャージでデューラ・ダンジョン演習に参加してそれなりの成果を出すことが望まれているのだ。
いや!
このメンバーでダンジョンで成果を出すって?
無理ですよ!
「チカ、わかってるよね?」
アンナさんがあたしの肩に手を置く。
「新しい商品の命運はあなたにかかってるんだからね!」




