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5ー10 箝口令

 5ー10 箝口令


 叔父さんが目覚めてから数日間は、あたしは、叔父さんの世話をかいがいしく焼いていた。

 叔父さんは、青かった目が赤いルビーのような幻獣の瞳に変化してしまった。

 それでも。

 叔父さんが生きていてくれる今が嬉しかった。

 叔父さんは、あたしが側に張り付いて離れようとしないのを当然のことのように受け入れていた。

 だが、メイアは、そんな叔父さんを冷ややかな目で見ていた。

 「もう、世話を焼いてやる必要はありませんよ、チカ様」

 「でも!」

 あたしは、寝室で横になっている叔父さんに食事を運びながらメイアに反論する。

 「叔父さんが倒れたのはあたしのせいだから!」

 「あなたのせいではありませんよ?」

 メイアがふぅっとため息を漏らす。

 「あれは、奴の問題でしょう?」

 『そうだぞ、女王よ』

 メイアの頭の上に乗っているダルメスがふん、と鼻を鳴らす。

 『それに、何よりもう、奴の問題は解決している。もはや、あれは、人ではない。故に最強。この世にもしも女王を脅かす者がいるとしたらそれは、奴しかおらん!』

 「そうなの?」

 あたしは、ふっと口許を綻ばせる。

 叔父さんがあたしと敵対することはない。

 それは、絶対だ。

 少なくともあたしは、そう信じている。

 あたしは、叔父さんの部屋の寝室のドアをノックすると中に入っていく。

 叔父さんは、すでに起き上がって服を着替えていた。

 あたしは、ベッドの側のテーブルに食事ののったトレーを置くと叔父さんを見上げた。

 「もう、起きてもいいの?」

 「大丈夫。心配しないで、チカ」

 叔父さんは、いつもと変わらず優しくあたしの頭を撫でる。

 「僕のことより、チカ、もう学園に行かないと!」

 叔父さんがあたしにいたずらっぽく笑いかける。 

 「聞いてるぞ、チカ。剣術の授業が苦手なんだって?」

 あたしは、頬が熱くなる。

 「ちょっと、合わないだけだし!」

 「なら、余計にはやく学園に戻らないと!」

 叔父さんがあたしを促した。

 「今度のデューラ・ダンジョンでの演習でいい成績を残せば剣術が苦手でも落第は防げるから」

 あたしは、はっとする。

 そうだった!

 あたし、ダンジョン演習のこと忘れてたし!

 チームのみんなに迷惑をかけてしまう!

 あたしは、納得したけどそれでも叔父さんをじっと上目使いに見上げる。

 「叔父さん、無理しないでね。あたしが学校に行っても、絶対に無理しちゃダメだから!」

 「ああ」

 叔父さんが微笑む。

 「約束するよ、チカ」

 あたしは、部屋に戻ると急いで学校に行く準備をする。

 あたしが玄関に向かうとすでに準備を整えたメイアとランディーノが待っていた。

 あたしたちは、馬車に乗り込み学校へと向かう。

 登校途中に教会によってマリカさんにも声をかける。

 マリカさんは、ここしばらくは診療所が忙しくて学校に行けてなかったらしいけど、慌てて登校準備をしてあたしたちと一緒に馬車に乗った。

 「ほんとに!」

 マリカさんは、あたしにぷんすか怒った様子で話し出した。

 「あの後、大変だったんですよ!チカ様」

 マリカさんの話では、あたしと叔父さんが姿を消してからロードスさんの指揮のもと騎士団と協力して人々を街まで輸送したらしい。

 でも。

 『西の魔女』の命で騎士団にも、教会関係者にも、そこにいた人々全てに『箝口令』が出されたらしい。

 いわく、『ここで起こったことは誰にも話してはならない』とのことだった。

 

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