5ー9 別たないで!
5ー9 別たないで!
叔父さんは、それから3日たっても目覚めようとはしなかった。
あたしは、つきっきりで叔父さんの看病をした。
ロードスさんを助けたことは後悔してはいなかった。
けれど、その代償が叔父さんの命だとしたら!
あたしは、知らないうちに涙が溢れ出して。
あたしは、メイアにすがりついて泣いてしまった。
「どうしようっ!叔父さんが死んじゃったら・・あたし、どうしたらいいの?」
「大丈夫です、チカ様」
メイアは、抑揚のない声で囁く。
「ユニコーンは、最強の幻獣です。そうそう簡単に死ぬようなことはありません」
「じゃあ、なぜ、叔父さんは、目覚めないの?」
あたしに問われてメイアが答えに困っている。
「それは・・わたしではわかりかねますが・・もしかしたら『西の魔女』ならわかるかもしれません」
『西の魔女』
あたしの脳裏に幼い姿に変化して甦った『西の魔女』のことが浮かんだ。
確かに、彼女ならわかるかも!
あたしは、すぐにペンを取り出すと『西の魔女』と書いた。
すぐにその場に『西の魔女』が現れる。
『西の魔女』は、数回瞬くとすぐにあたしに訊ねた。
「チカ、私を召喚した理由は、あなたの叔父であるジークナー公爵のことでかしら?」
「そうです!」
あたしは、『西の魔女』に訴えた。
「叔父さんが目覚めないんです!どうしたらいいかわからなくって!」
『西の魔女』は、取り乱しているあたしをその深い藍色の瞳でじっと見つめていたが、やがて口を開いた。
「この者が目覚めないのは、この世の理に逆らおうとした故。しかし、この者は、幻獣故もともとがこの世界の理の外にいるわけです。それが今、こうして苦しんでいるのは、これが人であろうとしているから」
『西の魔女』が囁く。
「あなたは、この者に人のままいて欲しいの?もしそうなら、この者は死なせるしかない」
あたしは、目を見開く。
涙が溢れて流れ落ちていく。
あたしは、叔父さんを失いたくはなかった。
『西の魔女』があたしに近づくとそっとあたしの肩に手を伸ばす。
「あなたは、この者を失いたくないのね・・ならば、この者が人でなくなるのを望むしかない」
『西の魔女』があたしに告げた。
「望みなさい、チカ。この者に命じるのです」
『西の魔女』が笑みを浮かべた。
「『生きよ』と」
あたしは。
叔父さんの眠っているベッドの脇に跪くと祈った。
叔父さん、死なないで!
たとえ、叔父さんが人でないものになってしまったとしても、あたしは、受け入れる。
叔父さんが叔父さんでなくなったとしても!
それでも。
それでも、あたしは、叔父さんに生きて欲しい!
ベッドの上の叔父さんの体が微かに身じろぎするのがわかった。
「叔父さん!」
「・・チカ・・」
叔父さんがうっすらと目を開くとあたしの頬に手を伸ばして触れた。
「私の・・女王・・」
あたしは、あたしに触れる叔父さんの手を握りしめた。
冷たい手。
あたしは、その手を暖めようとして握る手に力を込めた。
叔父さん。
あたしの大切な人。
あたしは、目を閉じた。
どうか、この人とあたしを別たないで!




