5ー6 診療所
5ー6 診療所
次の休日にあたしは、朝から診療所を手伝うために教会へと向かった。
教会は、貴族の住んでいる居住区画の外にある行政区画にある。
ランディーノが御者をして送迎してくれたけど、教会は苦手とか言ってすぐに帰ってしまった。
「夕方に迎えに来ますから!」
去っていくランディーノを見送ってあたしは、やれやれと肩をすくめた。
あたしは、出迎えてくれたマリカさんにピンクのかわいいジャージを渡す。
自分は、家からすでに着てきているので作業着に着替えることなくそのまま診療所に出向いた。
マリカさんもいったん自分の部屋に戻って新しいジャージに着替えてから診療所に出てきた。
あたしたちがお手伝いしている治癒師さんは、ロードスさんという中年のおじさんだ。
特に目を引くこともない。
ただのうらびれたおじさんだ。
でも、患者さんたちからは好かれていたし、診療所で働く他の人たちからも人使いが荒いわりに好かれていた。
今日も朝からあたしたちは、ロードスさんに命じられて診療所に来た人たちの怪我に巻く包帯の洗濯をしていた。
教会の裏にある井戸で2人並んで黙々と包帯を洗う。
大量の包帯をやっと洗い終えてしばらく井戸の近くであたしたちが休憩してたら、そこでたまたま知った顔に出会った。
「あら。こんなところでぼんやりとして時間を潰しておられるなんて余裕がおありですこと」
それは、魔法学園の特別クラスの生徒であるエレノアさんだった。
マリカさんと同じ光属性であり治癒魔法の才能があるエレノアさんは、あたしたちと同じように教会の診療所に通っていた。
まあ、彼女が言うには、あくまで治癒魔法の修行のためらしい。
あたしたちは、淑女の礼をするとエレノアさんに背を向けて急いでその場から立ち去ろうとした。
すると、エレノアさんは、あたしたちが洗って干したばかりの包帯を引っかけて下に落とした。
包帯がどろどろになるのを見てエレノアさんは、嫌みな笑いを浮かべる。
「あら、ごめんなさい。でも、暇なあなたたちに新しいお仕事ができてよかったですわね。せいぜいしっかりとお仕事なさいませ」
あたしがムカついているとマリカさんは、黙って1人落ちて汚れた包帯を拾って洗い直し始める。
あたしも慌てて一緒に洗い直す。
「いつも、ああなんです」
マリカさんがぼそっと呟く。
話を聞くとエレノアさんは、同じ聖女候補生であるマリカさんのことを陰でちくちくといじめているらしい。
「教会の神官様たちに言ってみたら?」
「無駄です」
マリカさんは、ふぅっとため息をつく。
「神官様たちもエレノア様の意地悪のことはよくご存知なんです。でも知っていても知らないふりをしているんです」
理由は、エレノアさんが聖女になるだろう可能性が1番高いから。
将来、自分たちの上司になるであろう人物に悪い印象を与えたくない。
そのためにエレノアさんの横暴をゆるしているらしい。
ちなみにエレノアさんが師事している治癒師は、診療所の主任治癒師なんだって!
なんか嫌な感じ!
あたしたちがロードスさんのもとに戻るとちょうどお昼頃で先に昼食に行くようにと言われて。
あたしとマリカさんが診療室から出ようとしたその時、騎士らしい人が駆け込んできた。
「ロードス先生!」
「どうしたんだ?」
ロードス先生が聞くとその騎士さんは、かなり焦った様子で告げた。
「街道に魔物が出た!怪我人がたくさんいるんだ!一緒に来てくれ!」




