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5ー2 お宅訪問

 5ー2 お宅訪問


 鍛練の後、服を着替えるときに汗をかいていて気持ち悪いから、あたしは、ペンで汗を拭くウェットシートみたいなものを取り出した。

 あたしはそれをマリカさんとアンナさんにも渡すと首もとや顔の汗を拭いた。

 だけどアンナさんは、ぼぅっとしてあたしたちが汗を拭いているのを見ている。

 汗を拭き終わるとあたしたちは、そのシートを更衣室の隅に置かれていたゴミ箱に捨てた。

 「何、これ?すごいっ!」

 アンナさんが突然声をあげる。

 「汗を拭くための濡れた紙?しかも拭いた後、捨てられるの?」

 アンナさんは、渡したシートの匂いをくんくん嗅ぐ。

 「なんかいい匂いがするし!」

 「それで汗を拭いてみなよ」

 あたしがアンナさんに言うとアンナさんは、それで体を拭い出した。

 「なんかすぅっとして気持ちいい?すごくすっきりするわ!」

 アンナさんは、あたしたちと同じようにシートをゴミ箱に捨てるのをちょっとためらった。

 「だって、紙は貴重なのよ!」

 なんでも紙は、すごく高価なんだとか。

 「それで汗を拭いて、すぐに捨てちゃうなんてもったいないわ!」

 あたしとマリカさんは、顔を見合わせる。

 「そうなんだ」

 「でも、これって、すごく便利よね?長旅では、なかなかお湯を使えなくて汗を流せないこともあるのよ」

 しばらく黙考していたアンナさんが意を決した様子で顔をあげるとあたしたちに告げた。

 「お願い。これからわたしの兄と会ってもらえないかしら」

 教室に戻るとすでに生徒たちは、多くが帰宅していて数人しか残ってはいなかった。

 「待ってたんだよ、チカ」

 グリエ君が待ち構えていてあたしたちに声をかける。

 「これから僕の家でみんなでお茶でも飲みながらダンジョン攻略について話さない?」

 「ごめんなさい」

 あたしは、先約があることを話した。

 「これからアンナさんのお家に招かれてて」

 あたしは、はっと思い付いた。

 「そうだ!グリエ君も一緒に来る?」

 言ってしまってからアンナさんを見るとアンナさんは、肩をすくめる。

 「かまわないわよ、グリエ君なら」

 というわけであたしたちは、2台の馬車に別れて乗り込むとアンナさんの家を目指した。

 ほんとならグリエ君は、別の馬車でないといけないらしいんだけど2人きりじゃなければいいということであたしたちの馬車に乗り込む。

 マリカさんは、アンナさんの馬車に乗せてもらうことになった。

 アンナさんの家は、貴族が住む居住区画の一角にあった。

 すごく立派というわけではなかったがこじんまりしてて可愛らしいお屋敷だ。

 赤い屋根のレンガ造りの屋敷の前で馬車から降りると使用人らしい女の人が出迎えてくれた。

 「おかえりなさいませ、アンナお嬢様」

 「キア、兄さんは?」

 開口一番にアンナさんは、訊ねた。

 キアさんという使用人の女の人は、アンナさんの勢いに驚く様子もなく答える。

 「ヨゼフ様は、いつも通り作業部屋にこもっておられますが」

 「すぐに兄さんを呼んで!会わせたい人がいるの!」


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