4ー11 ジャージ
4ー11 ジャージ
「万能薬っていうのは、どんな病にでも、怪我にでもきく薬のことよ」
アンナさんが教えてくれる。
「それ以外にも薬師が薬を作ってるけど街では、あまり使用はされてないわ」
「確かに、そうみたいですね」
マリカさんが頷く。
「診療所でも薬草を使う治癒師は少ないみたいです」
「なんで?」
あたしは、アンナさんに訊ねた。
「薬があればいろいろと便利なのに」
「薬の調合は、一部の薬師たちに伝えられているけれど、口伝であまり知られてはいないから」
グリエ君が答える。
「錬金術師も薬には、あまり手を出している者はいないな」
ほんとに?
あたしは、驚いていた。
もしかしてこの世界では薬師は、不遇職なの?
あたしがそうきくとアンナさんが首を傾げる。
「不遇というか・・そもそも薬師は、森の民で街にはほとんど近づかないから」
「それじゃ、万能薬が手に入らない人は、どうしてるの?」
あたしの質問にグリエ君が応じる。
「万能薬が手に入らない者は、教会の治癒師に治療を受けるんだ。でも、治癒師は、数が少ないからね」
「それで、マリカさんは、頼りにされてるんだ」
あたしは、マリカさんを見た。
マリカさんは、目を丸くしている。
「そんな・・頼りにされてるなんて・・わたしなんて何もできないのに」
「でも、治癒魔法の素質があるんでしょう?」
アンナさんが励ますように微笑んだ。
「あなた、きっと、いい治癒師になれると思うわよ」
午後からは、剣の鍛練の時間。
あたしたちは、グリエ君と別れて鍛練場の裏にある女子用の更衣室へと向かった。
この魔法学園には、女子は少ない。
そのせいか更衣室は、狭くて暗くて、湿った臭いがしていて掃除も行き届いていない。
窓もないし、明かりも灯されてないのであたしたちは、手探りで鍛練着に着替えるしかない。
あたしは、この世界の鍛練着が嫌いだ。
暑苦しくて、動きにくくて、着心地も悪いし最悪!
だから、あたしとメイアとマリカさんは、あたしが持ってきていたジャージを着ることにした。
ミランダ先生にハレンチだと称されたジャージだったけどあたしは、やっぱりジャージが好き!
だって、動きやすいし、体を締め付けないし!
アンナさんは、茶色のチュニックとズボンといった鍛練着を着ていた。
正直似合ってない。
「あなたたち、その格好・・」
アンナさんは、あたしたちのジャージ姿に言葉を失っていた。
でも、しばらくするといつもの調子であたしたちを質問責めにする。
「それ、何?どこで手に入るの?すごくカラフルで素敵ね!それに動きやすそう!」
「これは、あたしがもといた世界の体操着なの」
実際、あたしが着ているのは、中学で使っていた赤いジャージだし!
するとアンナさんが真剣な顔であたしを見つめた。
「そのじゃーじ、っていう服、あたしも欲しいわ!」
でも、あたしも3着しか持ってきてなくて。
そういうとアンナさんは、考え込んだ。
「兄さんならそれと同じか、似たものを作れるかも・・」




