4ー5 マリカのこと
4ー5 マリカのこと
「チカ!」
叔父さんがあたしの頬にそっと触れる。
叔父さんの目が心なしか潤んでいるような気がしてあたしは、驚いた。
いつもあたしを守ってくれる頼もしい叔父さんがまるで子供みたいに思われる。
叔父さんの手は、かすかに震えていた。
「無事でよかった」
叔父さんは、そう言うとあたしをぎゅっと抱き締めた。
「叔父さん・・心配かけてごめん」
あたしは、叔父さんの背中に手を回し撫でる。
叔父さんは、ほんとに心配性で、過保護なのだ。
メイアとダルメスが抱き合っているあたしたちを見てなぜか、羨ましそうな顔をしている。
あたしは、叔父さんが離れるとメイアに手を伸ばした。
「メイアも。心配かけてごめんね」
「チカ様・・」
メイアがあたしに抱きつく。
『我も!我もいるぞ!』
ダルメスがぱたぱたと飛んできてあたしの頭にのっかった。
「ダルメスも。ありがとう」
「お腹すいてないか?チカ」
叔父さんがあたしにきくのであたしは、ちょっと考え込んだ。
と。
ぐぅ、っとお腹が鳴って!
あたしは、顔が熱くなる。
タイミングよすぎだし!
メイアがくすっと笑って立ち上がるとベッドから少し離れた場所にあるソファの前のテーブルに置かれていたポットからカップにお茶を注いであたしのところに運んでくれた。
「ありがとう」
あたしは、受け取ると一口こくっと飲んだ。
じわっと染みていくように美味しくて。
あたしは、喉が乾いていたことに気付いてお茶を一息に飲み干した。
「無理もない。チカ、お前はもう3日も眠っていたんだからな」
叔父さんがあたしにテーブルにあった軽食を差し出す。
あたしは、それを受け取るとパクついた。
空腹が満たされていくにつれてあたしは、涙が浮かんできて。
食べながらあたしは、泣いていた。
怖かった。
いろんなことが1度に起きたような気がする。
マリカさんが毒を盛られて。
その犯人扱いされて投獄されて。
そして。
叔父さんが『西の魔女』に戦いを挑んだり、あたしが『西の魔女』を生き返らせたり。
信じられないようなことばかり。
叔父さんたちは、あたしが泣き止むまでじっと見守ってくれた。
あたしは、食事がすむとベッドから降りようとした。
あたしは、眠りにつく前と同じ
ジャージ姿だった。
よく見たらメイアもジャージ姿だ。
ということは、ここは。
「ここは、『西の魔女』のお城なの?」
「ああ」
叔父さんが不服げに頷く。
「まだ、召喚された『幻獣の女王』に毒を盛った犯人がわからないからな」
なるほど。
あたしは、マリカさんのことを思い出していた。
「もし、召喚された人が『幻獣の女王』でなければ、すぐにもとの世界に戻れるのかな?」
「いや」
叔父さんが首を振った。
「『西の魔女』たちが行った召喚では召喚された者はもとの世界には戻れない」
「あたしも?」
あたしは、故郷の両親のことを考えた。
そうだ。
手紙を書かないと!
あたしは、元気で何不自由することなく楽しく暮らしているって。
まあ、いろいろあったけど、それでも叔父さんがいてくれるから生活に困ることもない。
「チカは、もとの世界に帰りたいの?」
叔父さんがベッドの端に腰を下ろしてあたしを覗き込む。
「ずっと僕の側にいてくれるんじゃないのか?」
叔父さんは、迷子の子犬みたいな目であたしを見つめる。
あたしは、頭を振った。
「あたしじゃないの」
あたしは、マリカさんのことを思い出していた。
ほんとなら、彼女が召喚されることはない筈だったのに。
マリカさんは、あたしの代わりに召喚されてしまったようなものなのだ。




