4ー3 死
4ー3 死
部屋の中の空気が渦を巻いて騒ぎだす。
ユニコーンの姿になった叔父さんと『西の魔女』は、黙ったまま睨みあっていた。
息が詰まるような時が流れる。
2人は、動こうとしないが目に見えない攻防が繰り広げられていることがあたしにはわかった。
激しい気の流れにあたしは、立っていられなくてその場にしゃがみこんでしまう。
ユニコーンがいななき、前足で空を掻く。
『西の魔女』がベッドの上に倒れ込むと苦しげに呼吸を乱して胸を押さえた。
「くっ・・幻獣ごときに遅れをとるとは・・」
『私は、ただの幻獣ではない。それは、お前もわかっている筈だ』
ユニコーンが地面を蹴る。
部屋ががたがたと音をたてて揺れた。
崩れる!
あたしは、身構えた。
気を失っているメイアとダルメスの体が空に浮かんでパチパチと火花が飛んでいる。
まずいっ!
このまま叔父さんの力が暴走したらみんなが危ない!
あたしは、叔父さんに呼び掛けた。
「叔父さん!もう、ダメ!」
あたしは、叫んだ。
「これ以上の力の解放は!」
しかし、叔父さんには、届かない。
怒りにとらわれている叔父さんにあたしの言葉は届かない。
あたしは、『西の魔女』を見た。
『西の魔女』は、ベッドの上で体を折り曲げて血の涙を流していた。
「ここ、までか・・」
『西の魔女』が切れ切れに言葉を漏らす。
「もう、少しで・・世界は・・救われたのに・・」
あたしは、ぞわっと全身が総毛立つのを感じた。
このままじゃ、ダメだ!
ここで『西の魔女』を失ったら世界は完全に終わる。
誰かがあたしにそう呟くのが聞こえた。
誰?
あなたは、誰なの?
あたしは、乱れる心を整えるためにすぅっと深呼吸をする。
ここで震えてるだけじゃ、ダメだ!
あたしは、声の限りに叫んだ。
「争いを止めよ!我に従え!」
ぴしっと空間が割れて崩れる感覚がして!
あたしの周囲の空気が変わっていくのがわかった。
静まっていく。
その場を支配していた荒ぶる気が治まっていくのを感じてあたしは、ホッと吐息をつく。
叔父さんがその場にしゃがみこんで途方にくれるような眼差しであたしを見上げている。
あたしは、その美しい白馬へとそっと手を伸ばして触れた。
「いいんだよ。もう、大丈夫。ありがとうね」
ユニコーンは、あたしの手にそっと頭をすりよせ目を閉じる。
部屋の外が騒がしくなりミランダ先生が飛び込んでくる。
「おばあ様!」
すっかり荒れ果てた室内を見てミランダ先生の瞳が絶望に揺れる。
「おばあ様!」
ミランダ先生が『西の魔女』に駆け寄った。
『西の魔女』は、もう虫の息で。
「死なないで!おばあ様!」
ミランダ先生は、『西の魔女』にすがりついて泣いていた。
あたしは、凍えたような心のままミランダ先生と死に行く『西の魔女』を眺めていた。
「・・助けて・・」
ミランダ先生があたしを見上げた。
「おばあ様を・・助けて・・ください・・」
「なぜ?」
あたしは、まるで自分じゃないみたいに言葉を吐いた。
「あたしが、なぜ、その魔女を助けなくてはいけない?」
「たった1人の家族なの!」
ミランダ先生が泣きながら訴えた。
「私のおばあ様を・・死なせないで!」




