4ー2 魔女の願い
4ー2 魔女の願い
あたしは、立ち上がると部屋の外へと向かおうとした。
叔父さんを止めないと!
でも、部屋の扉は、固く閉じられていて開かない。
あたしは、扉を両手で叩いた。
しかし、扉はびくともしない。
「無駄なことは、お止めなさい、チカ」
背後に『西の魔女』の気配を感じてあたしは、振り向いた。
魔女は、ベッドから動くことはない。
それでもその威圧感があたしに迫っていた。
「お戻りなさい、チカ。そして、最後まで私の話をお聞きなさい」
あたしは、戻る気なんてなかった。
あたしの意思を通そうとするかのようにメイアが『西の魔女』に向かって拳を振りかざす。
「邪魔」
『西の魔女』がふっと頭を振るとメイアが動きを止めてその場に倒れる。
『ならば!』
ダルメスが空中に飛び上がると『西の魔女』に向かって炎を吐く。
しかし。
炎は、魔女には届かない。
ダルメスもぽとりと床に落ちて転がる。
「来なさい、チカ」
あたしは、イヤイヤと頭を振る。
それなのに、あたしの意思に反してあたしの体は、引き寄せられるように『西の魔女』の側へと近づいていく。
ベッドの横に立ったあたしに『西の魔女』は、語りかけた。
「かつて世界には、無尽蔵に魔力の素が溢れていた」
それは、全ての魔力の素である『幻獣の王』の力が溢れていたから。
だが。
人は、王の力を利用し己の欲を満たそうとした。
そのため、王は、人を滅ぼすことに決めたのだ。
王が人を滅ぼすことに反対したのは、『幻獣の女王』のみ。
女王は、人を守るために王を封じた。
女王が王を封じた場所から生い茂ってきたのが現在の魔素のもとである『世界樹』だった。
「だが、今、世界樹は、枯れかけている。魔素がなくなれば我々人間もまた生きてはゆけぬ」
『西の魔女』が自嘲気味に笑う。
「だから、私は、かつて『幻獣の王』と契約を交わしたのだ」
必ず、『幻獣の女王』を見つけ出し王の眠りを覚ます。
「その約束と引き換えに王は、私に力を分け与えた」
それは、人の身にはすぎる強大な魔力量。
そして。
全ての幻獣から守られるという王の加護。
「この契約は、長い時間をかけて私の体を蝕んできた。だか、世界中を探したが王を目覚めさせる『幻獣の女王』は見つからなかった」
『西の魔女』が暗い、なのに不思議に輝く瞳であたしを見つめた。
「異世界からの召喚も試した。だが、『幻獣の女王』は見つかることがなかった」
魔女は、苦い笑みを浮かべる。
「見つからない筈だ。幻獣の器であるあなたの叔父さんが私の先手を打って隠していたのだから」
あたしは。
『西の魔女』から目が離せなかった。
怖い。
でも、知らなくてはいけない。
あたしは、全ての真実を知らなくてはいけないのだ。
でも・・
あたしに何ができるっていうの?
あたしは。
あたしは、ただの子供で。
守られているだけの存在なのに!
「チカ」
『西の魔女』がその細く痩せ衰えた手を伸ばしてあたしの頬に触れた。
冷たい手。
心の底まで凍えさせるような冷たさにあたしは、怯んだ。
「怯えないで、チカ」
『西の魔女』があたしの心を捕らえて離さない。
逃げられない!
『西の魔女』は、あたしに囁いた。
「お願い・・世界を救って」
そのとき、耳をつんざくような爆音が聞こえて部屋の扉が粉々に吹き飛んだ。
「叔父さん!?」
そこには、虹色に輝く角を持つ白馬がいた。
その神々しい美しさにあたしは、息を飲んだ。
『チカを返してもらうぞ!『西の魔女』』




